短編ONEPIECE
□壊れないで
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頭の腕が無くなったとき、私は目の前が真っ暗になった。
意識を失いかけた。
その暗闇で光をくれたのはやっぱり頭だった。
「レティっ…しっかり、しやが…れ」
しっかりしろなんて、私が言うべき台詞なのに。
頭は苦しそうな声でそういった。
我に返った私は出来るだけの処置を施した。
だけど粉砕された頭の腕は、もう元に戻ることはなかった。
生還できたのは奇跡だと思った。
腕だけではなく、右半身全体に深い傷を負っていて、なにかしら生涯が残るんじゃないかとみんなが心配した。
私も心配だったけれど、生還できただけで嬉しくて多くの望むことは止めた。
ワンピース。
頭の夢。
もしも頭が復帰できないとすれば、その夢を諦めさせるのは私の仕事だと思う。
そんなことしたくはないけれど。
ワンピースのかわりにはなれないと思うけれど、頭の故郷へ帰って一生頭の面倒を見ることすら視野に入れていた。
それでも彼は、海賊として再び甲板に立ち、戦った。
義手を着けて、今までよりさらに強くなった。
だけど、私は知っているのだ。
頭が夜や寒いときに腕の痛みに耐えていること。
気づいていた。
腰に巻いているその太いベルトは、本当はベルトじゃなくてコルセット式のサポーターなんだって。
察していた。
この傷を受けたときのことを悪夢に見るんだって。
そしてそんな自分にきっとイライラしているんだろうと。
きっと今晩はそんな夜になる。
昼間に戦った海賊はある程度強くて少しだけ苦戦したから。
頭は腕を酷使して痛むかも知れないし、圧倒的な差で勝利できなかったことからあのときの恐怖を思い出すかもしれない。
頭だって人間だからきっと恐怖とか、そういう人間の本能的な感情はあると思う。
まぁそれを感じることはすごく少ないだろうけれど。