短編ONEPIECE
□壊れないで
2ページ/3ページ
「頭…」
とんとん。
ノックをすれば唸るような返事が返ってくる。
「入っていいですか?」
「――毎度言わせんな。ダメに決まってんだろ」
「前は入れてくれたのに?」
「っ……」
怪我をしてから、頭は私をあまり部屋に入れてくれなくなった。
苦しむ自分を誰にもさらしたくないんだとおもう。
でも今日は、ここで引く気にもなれなくて、私は扉に手をかけた。
中は明かりはついていなくて、ロウソクが一本つけてあるだけだった。
頭のため息でロウソクが揺れて、壁に映った大きな影も揺れた。
頭は赤く光る目でこっちをにらみつけていた。
鼻に皺が寄っているけれど、義手を外して腕に手を添えているところを見ると思った通り痛みに耐えていたらしい。
「おい」
「頭。私は頼りないですか?」
「……」
「頭が弱ってるところを見たって、私大丈夫です。へっちゃらです」
「…何が言いてぇ」
「あ、でもへっちゃらって言うのは嘘です。だって頭が苦しむのを見るのは辛いし…。
でも頭が一人で苦しんでるって考える方が辛いです。
私の自己満足に過ぎないと思うけれど、今晩はここにいさせてほしいです。
ダメですか?」
しばらくの間、根気強く見つめ続けていたら頭は立ち上がった。
やっぱり追い出されるのかな。
だけど予想に反して頭は私に背を向けて、そのままベッドの方へ行ってしまった。
ぽかんとしていたら頭が振り返って、「とっとと来い」っていってくれた。
私は扉を閉めて、小走りに頭に抱きついた。
赤いコートがもふもふする。
頭のにおいだ。