短編GIANTKILLING
□やってやる！
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ホイッスルの音が響いて、試合終了が示された。
スコア０−２
俺たちＥＴＵはホームで４連敗目を迎えていた。
スタンドで待ちかまえているスカルズに何を言われるのかと想像するだけでため息が出てくる。
タンさんが俺の頭をぽんぽんたたいて「気持ちは分かるけどしっかりなー」と言った。
バックスタンドまで挨拶に行くと、やっぱし怒鳴られた。
もっと走れるだろ、もっと行けるだろ。
気持ちだ気持ち！
分かってる。
そんなことは誰よりも分かっている。
けど俺は毎試合気持ちを入れてきているつもりだし、全力のつもりなのだ。
もしかしてつもりってだけで本当はもっと行けるのかな、なんて毎度考えるけれど、
多分これが俺の全力だ。
全力でやったのに悔いが残るのもいつものことだ。
…だーっ！ダメだ俺ぜんっぜんサッカー選手じゃねぇよチクショー！
「俺たちだってな、忙しい中時間作って毎度応援に来てるんだ！
けどそんななかで四連敗なんかされてもイライラばっかつもってくんだよ！
勝ったと思ってもすぐに連敗に走る。
いい加減連勝しろよ！
次こそは勝って勝ち点三点つみあげてくれよな！」
羽田さんのお叱りが終わって、俺らは頭を下げてからゴール裏の挨拶に向かった。
その間にも後ろからはブーイングがやまなかった。
「次決めてくれよー！」
「世良ー！外してばっかだったじゃねぇか！」
「次はきめろよなー！」
ぐっ…やっぱ俺かよー！
そりゃ俺だってゴールがほしい！
ＦＷなんだ、ゴールできなかったら意味ねぇし。
今まではプロになれたってだけで満足だったけど、そんなんじゃいけない。
今は何よりもゴールがほしい！
ＦＷなのに、今期まだノーゴールだぞ俺！
「世良さん、いつもにましてちっさいっすね」
「うっさいよ赤崎ー！」
「っるせんだよテメーら！四連敗したのに冗談なんか言ってる場合じゃねんだよ！」
前を歩いていたクロさんがばっと振り向いて怒鳴り散らしてきた。
スギさんが「やめろよクロ、サポーターの前だぞ」となだめようとする。
「落ち着きましょうよクロさん、確かにそうかも知れないッスけど、
ずっとくらーいまんまで練習も雰囲気悪いとなんていうか…士気があがらないというか…」
「なんだと清川てめぇゴルゥアア！」
「やめておけ」
コシさんが一言言うと、みんなは一気に静かになった。
「試合に出られなかった奴も居るんだ。
そいつらの代表でもある俺たちが、こんなところで口げんかなんてしてていいのか？」
そりゃ…そうだよな。
みんなもそれぞれに思うところがあったのか、それ以上は何も言わなかった。
あーあ、そうだよな。
堺さんに「何はずしてんだよチビ」って言われてけっ飛ばされそうだ。
堺さんの足はきっと今頃貧乏揺すりのおかげであったまってて存分にうごくんだろうな。
俺は、この試合に１トップとして出してもらったからには
堺さんやナツさんの分まで点取ってこなくちゃいけなかったのに…
「世良さーん！」
そのとき、誰かが俺を呼んだ。
ちょっと驚いてそっちを見ると、挨拶しに俺たちが並んでいる
ゴール裏にいたサポーターだった。
ゴール裏は見にくいからサポーターも少ない。
だからブーイングはあまり受けない。
むしろそこはサポーターとの距離が近くて、負けても
明るい言葉ばっかりかけてくれる席だった。
ただ、俺が驚いたのはそのサポーターがあげていたゲートフラッグだった。
「２１ 世良 Get Goal！」とかかれてる。
あれはいつも、バックスタンドのスカルズの中に混じって上げってるやつなのに、なんでこっちに…？
「世良さん！
あたしはどんなにシュート外しても、ずっと応援してるから！！」
それを聞いた周りのサポーターも「なんだそりゃ」と笑った。
「カヤちゃん、そんな応援あるかよ」
「だってさー、選手みんながんばってんのにこれ以上がんばれなんていうブーイングはできないよ！」
あ…そっか。分かってくれてる人も、いるんだ…
「でもたまには世良さんのゴールもみたーい！」
「…！…よーっしゃあ！次は絶対決めるぞー！うおおおおお！！」
「うっさいよ世良さん、挨拶しますよ」
こんな応援してくれる人がいるのに、なんなんだ、俺！
この人達のためにもぜってぇやってやるから、見ててくれよな！
――あなたの声に、答えられるように――
後書き
ゲートフラッグというのはまぁ、なんか両手で上げる旗でして
野球とかでボードに選手の名前とかメッセージ書くやつのサッカーバージョンです！
夢主あんましでてこなくてすみません（汗
夢主は負けた後のバックスタンドの雰囲気が嫌になったので人の少ないゴール裏に来ていました！
まぁゴール裏にサポーターが集まるのが普通なんですが、
バックスタンドに集まるチームもあるし、たしかＴＥＵもそんな感じだったと思うので…
以上でした、ありがとうございました＾＾