短編GIANTKILLING

□こんき
1ページ/4ページ



今期0ゴールの彼

婚期を逃す私と彼

根気がない私

根気がある彼


こんきが一緒なのは、婚期だけだ。

堺と私は、そんなかんじ。


 私はサッカー選手じゃない。

だから堺の苦しみも本当の意味では理解できていない。


 婚期を逃したのはお互い様だけど、堺はサッカー選手として忙しかっただけで引退した後でもできる。

仕事を言い訳にそういう努力しなかった私とは大きく差がある。


 堺は根気強く挑戦する。

歳を言い訳にはしない。

 対する私は根気がない。

すぐにあきらめちゃう。

結婚もそうだけど、今までやってきた趣味とか、学生時代の部活とか、若い頃の恋だとか。


 堺が好きだ。


いうだけの根性ももちあわせちゃいないから、こうしてずるずるこんな歳になってしまった。

ああ、ほらまた言い訳をした。


 若い頃の恋の中には、堺のことも含まれている。


堺がJリーガーになった頃、同期でチームの広報になったのが私だった。

話も合うから、割と周りよりも早くうち解けた。けど、堺は移籍になった。


数年経って、私は堺を追いかけてETUに来た。


堺は、前みたいに接してくれた。

だけどそれ以上にはなれなかった。

ピークを過ぎても、堺は根気強くサッカーを続けた。


私は、堺のことを諦めて、でも諦め切れない気持ちがわずかにあるのか次の恋には向かえなかった。


「あー!もうっ、堺のバカヤロー!」


広報の仕事の一環として、毎月二人の選手の特集を組むことが入っている。

今月は堺と世良君だった。

写真処理をしながら私は資料の多さにいい加減イライラしながらだんっ!と机をたたいた。

ちょうどお昼頃の事である。


「え、カヤさん!?」

「ごめんゆりちゃん。

でも許してとは言わない。堺バカ。

マジでなんなのあの男は!」


かっこいいよチクショー!

え、何この写真、この決め顔はんぱねぇー!

堺がこんな顔ばっかりするから、私はっ…!


「くっそー!堺なんて大嫌いだあああ!」

「カヤさんおちついてー!!」


私の人生を…私の婚期をかえしてよ!――
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ