短編GIANTKILLING

□こんき
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仕事が終わると、もう広報室に居るのは私だけで、外は暗くなっていた。

今日はずっとデスクワークで肩がこった。

目も疲れた。

デスクワークは苦手だ。

それから家に帰って、一人でご飯食べて。

いつものことだけどやっぱりため息がでちゃう。


ええい!いいのよ別に!一人ってストレスたまらなくて楽なんだから!


開き直ってバックを荒々しくつかんで広報室を出た。

…というか出ようと思って扉を開けたら、ジャージが視界いっぱいに映った。

驚いて一歩下がると、仏頂面した堺だった。


「さっ…ささささ堺!おつっ、おつかれ…」

「おぅ、おつかれ」


びっくりしたー、心臓が口から出そうだった。

けれどおかしい。

堺はおつかれ、といったきり動こうとしない。

この感じ…もしや怒っていらっしゃる…?


「…あ、あのー…堺さん、怒って…るかな…?」

「ああ、最高にな」


ひぃぃい!なんて恐ろしい!一刻も早く家に帰らねば!


「お前、まさかこのまま帰るつもりかよ」

「え"」

「俺がお前しか居ない広報室にわざわざきたんだぜ?

お前に用事があるとしか考えられねぇよなぁ?」

「そ、そだねー…あはは…」

え、やだなんでそんなに怒ってるんですか堺さんんん!?

いや、ガン見されると照れちゃうけど、堺かっこいいけど…けどやっぱ、この人怖いわー…


「とりあえず付き合え。どうせ独り身なんだから帰って飯食うだけで用事はないだろ?」

「なっ…なんてこというのさ!」

「それに、仕事に響くからって、オフとオフの前日しか出かけないもんな、お前」

「えっ…――」

「とにかく、いくぞ」

「あわわ!お待ちを!」





明日の朝は俺が迎えに行くからと、自分の車を置いてきぼりにしたまま堺の車に押し込まれた。

どこに連れ去られるかと思っていたら車はスーパーに着いた。

車を降りて足が速い堺に小走りについて行った。

堺は私を横目に見てから歩く速度を落としてくれた。

堺は昔からそうだ。


それで、そういうところが好きだ。


 ほとんど話さずにぽいぽい食材を選んでいく堺に着いていく途中で、

小さな女の子が一人で泣いているのに気がついた。

堺は両手に持った野菜と睨めっこをしていたから私はその子のところに向かった。

小さい子が泣いているのに放っておくのもなんだし。

女の子はお母さんとはぐれたみたいだけど、少し一緒に歩いてあげればスーパーだったからすぐに見つかった。

お母さんを見つけた女の子は「おねえちゃんありがとう!」と言って、走っていってしまった。


「おねえちゃん、だとよ」

「ぎゃあ!」


女の子の後ろ姿を見送っていたら背後から堺の皮肉が聞こえてきて思わず声を上げた。


「うわっ、色気のねぇ声」

「うっさい。びっくりするでしょうが」

「わりぃな。ほら、行くぞ」

「あ、待ってよ!」
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