短編GIANTKILLING

□カラ
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 この前ふと見たCMに、共感できるものがあった。

まぁ、うる覚えだけど

屋上でお昼ご飯を食べようとしたら屋上が閉まっていた

女の子を自転車の後ろに乗せて帰りたかったけど警察に補導された

とかそんな感じの。

 確かによく漫画とかドラマとかでは屋上で青春する人をよく見るが、

実際には「生徒立ち入り禁止」と赤い太文字と厚いドアに行く手を阻まれている。

 二人乗りもそう。

二列走行ですら止められて注意される時代だ。

そんなことすれば一発でつかまっちゃうだろうな。


あーあ、つまんないの


 それに私はこの学校が嫌いだった。

進路や成績の関係上きたはいいけど…スカート丈も膝が見えると注意されてまるで中学生みたいだし、

髪を染めたり、ピアスなんてもってのほか。

私はこの前、爪が長いから切るように指導された。

けど、ある日隣の席の持田が、言った。

「なぁ紺野」

「なに」

「屋上でメシくおうぜ」

「あたしにいってんの?」

「そう。だってお前しけた顔してつまんなそうだし」

「まぁ…そうだけど…でも屋上立ち入り禁止だよ?」

「気にしない気にしない」

「もし怒られたら持田のせいにするよ」

「かってにすれば?」

なんだそれ。

持田とは、あまり話したことはない。

知っているのはこの学校の校則を破りまくっていることと、サッカーがうまいらしいって事だけだった。

「ほら早く来いよ」

「おいてけば」

「ぶはっ、なにそれ。そんなの許すわけ無いじゃん」

「は?てか…え、ちょっと待ってよ!」

のんびりお弁当を出していたら、持田に手を引っ張られて連行された。

持田のせいにするっていったらかってにしろって言ったくせに、私がのんびりしてるのが許せ無いだなんて。

ほんと変な人。

けど、屋上の風は気持ちよかった。

フェンスに背を預けて座っていると、不思議な気分になった。

「持田って、よくわかんない」

「俺?俺サッカーうまいよ」

「持田って…自分でそういえるほどサッカーうまいの?」

持田は目を大きく開いて私をまじまじと見つめてから、「ぶはっ」と吹き出した。

「なにそれちょーウケる」

「なにがよ」

「いや、なんでもないけど。今日の帰りは後ろに乗せてやるよ」

「チャリの?」

「ほかになくね?お前今日歩きだったじゃん」

「なんでしってんの」

「さぁね?」

「警察に補導されるよ」

「でかい道通って帰るからそうなるんだよ。あのCMの男はバカだ」

へぇ、持田も、知ってたんだ。

「うん、きらいじゃないかもね」

「なに?」

「持田、嫌いじゃないよ。

おもしろい。

規則って破っちゃだめなんだろうけど、たまにはいいかもね」

普通に見れば小さいことだけど、このときから私の世界はようやく動き出し
た。


「ぶはっ、マジでウケるー」


持田は私の弁当から卵焼きを持って行ってしまった。

それ、楽しみにしてたんですけど。




――殻を破れば世界がある――







後書き
あのCMです。

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