短編GIANTKILLING

□サポと持田と時々ワン公
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「お前……」

「ごめんなさい持田さん、変なところ打ちませんでしたか……?」

「いや…平気だけど……」

「なら、よかったです」



そういって、女は綺麗な顔で笑いやがった。なんだこいつ。
俺のこと助けておいて、俺の心配するだけで見返りも求めないなんて。




 持田さんは、怪訝そうな顔をしている。やっぱり…迷惑だったかな。
  もしかしたら犬を蹴りそうだったの、気のせいだったのかも知れないし。





「じゃあ、私はこれで…」



女はまさに死刑囚が死刑されるときのように表情を一変させて、審判の方に向き直った。




 審判に向き直ると、審判はあっけにとられた顔をしていた。
 そうだよね、日本でこんな事が起こったら普通驚くよね。





「待って――」

「え……?」

「ありがと」



女は、目をパチクリさせた。
確かにおれはあんまり礼とか言わないけど、ここは言うべきところだよな。




 持田さんが、お礼をいった……






「審判」

「はい」

「いっとくけど、今のは俺が悪いよ」

「分かってますよ」



わかってんじゃねぇか。
審判はイエローカードを掲げた。
二枚目。
退場で、次も試合停止だ。けど最悪の事態には陥らなかった。
この女のおかげで。




 結局、審判はイエローカードを上げた。あー…これはシーズン半ばのチームにとってはすごく痛いことだ。


相手のサポーターはよく分からないけれど試合を止めるな、とブーイング。


 東京Vのサポーターは、コールリーダーが「カヤ!!」と叫んで、それに続いて私の名前がコールされた。





俺はそのカヤって女に肩を貸してやって、
訳が分からずにうろついていた犬にも声を掛けてピッチを出た。
なんだ犬っころ、ちゃんと付いてくるじゃんか。




 持田さんはご丁寧に肩を貸してくれて、私たちはならんで、ピッチをあとにした。



  多分、不思議な光景だった気がする。






――サポと持田と時々ワン公――







後書き
私の応援しているチームのバックスタンドは後から作られたもので
本当にちょっとまたげば陸上で使う通路越しにピッチの前に出られるので
ふつうのクラブの高いところにあるゴール裏から飛び降りたわけではありません^^


最近なぜか持田の話ばかりが浮かぶ…

PS見やすいように色を変えてみましたがどうでしょう?
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