短編GIANTKILLING
□道具じゃなくて
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海外にいる間、気が気じゃなかった。
持田さんの脚が悪いという話がニュースであがったからだ。
つまりは前からあまりいい状態ではなかったけれど、とうとう隠し通せなくなってきたということ。
すぐに帰りたかったけど、留学期間はあと1ヶ月だったから我慢して、持田さんにはメールをした。
けどいくら脚のことを聞いても答えてくれない。
電話もでてくれない。
試しにまったくサッカーと関係ない話をしたらメールは帰ってきた。
一度電話もくれたけど、持田さんはいつもよりたくさん話して私が脚の話をする事を阻止して見せた。
心配でならなかった。
その心配を受け付けない持田さんにも腹が立ったけれど
プライドの高い彼が今独りで戦っていると思うとそんな苛立ちは消えた。
同時になにもできないという無力感。
とりあえずは、持田さんが好きなものをうまく作れるような練習を散々して、留学期間の終了とともに
打ち上げもそっちのけで持田宅へ向かった。