短編GIANTKILLING
□道具じゃなくて
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今から行くねとメールをしておいたから、鍵は開いていた。
久々の持田宅であるとともにどんな反応なのか見当が付かないため、緊張しながら扉を開いた。
靴が散乱した玄関から「持田さん、来ましたよ」とリビングへ声をかけて上がり込んだ。
リビングへ入ると、持田さんはソファに腰掛けていた。
玄関の靴以上に散らかったリビング。
サッカー雑誌の山は崩れていたし、今日はオフだったみたいで頭は寝癖だらけ。
もうお昼過ぎなのに…
「持田さん?」
「ぶは!メール見なかったわけ?こなくてイイって言ったじゃん」
「そんなの、見てない」
見ていても、きっと来ていたよ。
だって鍵は開いてるし、散乱した私物はきっと私じゃないと片付けられないし、
何より持田さんが…
急に涙が溢れてきた。
バッグをその場に放り投げて持田さんの元に走った。
目を合わせても無力な視線を返されるだけだ。
こんなに弱り切った持田さんは初めてだった。
きっと辛かったに違いない。
いいニュースで騒がれてばかりだったのに一変して悪いニュースが入って、有ること無いことかかれて。
いつもなら気にしないですむけど今は自分が信用する自分自身は不安定で、
けれどこの人は頼ることも、泣くことも知らないんだ。