短編GIANTKILLING
□大切なもの
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<カヤ?どうした>
「――まさ…し…っ…」
政志の声聞いたら、なんか急に安心しちゃって涙がまた溢れてきた。
声が震えるけど泣いてもどうしようもないからぐっと押さえる。
携帯の向こうで太鼓や人の声が聞こえてくる。
今日はETUの試合だ。だから電話したくなかったのに…
<選手出てくんぞ!わりぃ、代わりにコール頼む>
そう聞こえて、次に風の音がした。
やがて太鼓の音は消えた。
電話しやすいようにわざわざスタジアムから出てくれたのかな…?
<――で、どうした?>
「あ、あのね…っ…怪我しちゃって…」
<なんだと!?大丈夫なのか!?>
「わかん、ない。とりあえず親に連絡とれなくて、歩けないから…帰れなくてっ、政志しか思い浮かばなくて電話して…けど…っ…」
<お、おいちょっと落ち着け>
「でもだって、もう試合始まっちゃうもんっ」
口に出したら、申し訳なさが増してきて涙が流れちゃった。
だけど次の瞬間罵声が飛んできた。
<バカヤロー!試合なんざ一年40回あんだ!お前の方が大事だろ!
いや、たとえ試合が年に一度でもお前が大事だ!
今どこだ、大学か?>
あんまりに、政志が必死でそういってくれたからもっと涙が出てきちゃって、我慢してるうちに友人に携帯を取り上げられてしまった。
友人は大学のどこにいるかとか、そういう細かいところを政志に説明してくれた。
友人は携帯から耳を離した。
「すぐ行く…だってさ」
「ん、ありがと」
「いいのよ。膝はどう?」
「さっきよりマシ」
「ちゃんと冷やさないと痛みが増すからね。」
「ん」