短編GIANTKILLING
□幸せ
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※ちょっとだけジブリネタが入ってますご注意(分からなくても読めます!)
高校に入って、初めて彼氏が出来た。
「あの…えっと…好きッス!付き合ってください!」
「……え……?」
「す、すんません!」
「え、謝った!?」
接点がほとんどなかった後輩の世良君が、そういって告白してきたときにはすごく驚いたのを今でもよく覚えている。
唯一ある接点といえば友人の堺君の後輩で時々話を聞くと言うくらいだ。
あ、前にサッカー部の前を通りかかった時堺が紹介してくれたこともあったけど。
まぁとにかく、すごくすごく驚いたわけだ。
だって私は、下級生の男子が憧れるマドンナみたいな存在ではないし。
それに好きなタイプは年上で包容力のある人だ。
だけどその後輩の必死そうな顔を見て、私は「わ、私で良ければ…」と口にしていた。
いつの間に答えていたことに自分でも驚いたけれど世良君が「っしゃー!やったぞ、オレ!」なんて喜んでいるところを見たら私まで嬉しいような気持ちになってしまった。
その後、世良君のことは何も知らないのでお試しで付き合いましょうと言うことになった。
言い出したのは世良君で、多分私を気遣ってくれたんだと思う。
良い子だ。うん。
それと信用できる人にしか言わないように頼んだ。
実を言えば数日前にサッカー部の同級生から告白されたのを無下にしたから、世良君がとばっちりを食らわないか心配になったのだ。
あとやっぱり恥ずかしいし。
その旨を伝えれば世良君も承諾してくれた。
「紺野、世良とあれなんだってな」
「え!なんで知ってんの!?」
翌朝、朝練を終えて教室に入ってきた堺は小声でそう話しかけてきた。
「なんでって…あいつが言ったんだよ」
「他にも誰かに話してた?」
「いや?あいついつも声デケェくせによ、珍しく小声で報告してきやがった。
…やっぱウィルの事があるから口外なのか?」
ウィルとは、その私に告白してきた男子のことだ。
ハーフだからウィリアムって名前で愛称がウィルなのだ。
ちょっと顔が良いからって自慢げな態度がきらいだ。それでもサッカー部のエースなんだってところがマジむかつくけどね。
(もう一人ジーノっていう同級生が居て、あいつもハーフでモテモテだけどなんかあいつは恨めないヤツなので例外としておく。)
「うん…あいつ怒ってた?」
「ああ、部室でさんざんお前の悪口たたいてるぜ」
「えー!ヤなヤツ!堺君庇ってよ!」
「めんどくせぇ」
「ヤなヤツ、ヤなヤツ、ヤなヤツ!」
「おいジブリネタやめろ…」
「せい●くんとしず●ちゃんいいよね」
「…でもよ」
「スルーかコラ」
堺は一呼吸置いた。何だろうと思って堺を見上げると、堺は私から目を離したまま気恥ずかしそうに言った。
「まぁ…ありがとよ」
「え、なにが!?」
「あれだ、どうせ世良のこと好きでもなんでもねぇだろ?」
ちょっと堺君、その言い方私が酷い女みたいに聞こえるよ。
「…まぁ、たしかにまだ好きじゃないけどさ、思わずオッケーしちゃうくらい真剣だったから、好きになっちゃうかもね。現に良い子だと思うし」
「っは…まぁお似合いだよ。ウィルとお前より、あの馬鹿とお前のほうが」
「そう?そりゃどうも」