短編GIANTKILLING

□ラストゲーム
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※30巻ネタ


私はみんなが知らない猛のことを知っている。

海外にいくまでのいきさつとか、その後のこととか、どんな気持ちでETUを去ったのかとか、またどんな気持ちでETUに戻ってきたのか。

猛は海外に行く前、当時付き合って2年目の私に突然別れを告げた。

もうあきちゃったって。

私はその言葉が嘘だとわかった。

だからただ一人猛のやりたいことを聞くことができた。

あの時あの言葉が嘘だとみ抜けて本当によかったなぁ。

でも日本に帰ってきて監督業についてから猛はずっとクラブハウス暮らし。

そりゃあ海外にいる頃よりも沢山会えるけど、せっかく日本にいるのにさみしいじゃない。

だから今日、猛にクラブハウスまで迎えにこいって言われたとき、ちょっと嬉しかったんだ。


――なのに。


「ほらまっちゃんしっかりして!」

「むっ、無茶ですよ監督ー!」


グラウンドにいる猛は、ボールをけりあげていた。

非常に愉快そうに、そして脚がダメなんてこと忘れさせるような軽やかさで。

あんな楽しそうに輝く猛を、私は久々に見た。

現役の選手達に劣らずすごいテクニックでシュートして。

なのに現実は残酷なもので、猛の動きはどんどん鈍っていった。

曇っていく表情も、なんだか全部転落していった猛の選手人生を表して居るみたいで、苦しかった。

だけど私は目を離さない。

猛がなんど転んでも、絶対に。だって私に見てほしくて呼んだんでしょう?

ねぇ猛。


「猛!最後までちゃんとやんなさいよ!」


泣き叫んだとき、猛がボールを蹴ってその場に倒れ込んだ。

最後のパスだった。

直後ホイッスルの音が鳴らされた。


ああ、終わったんだね猛。


試合が終わりみんなが猛のもとへ行く。

猛は、選手達に何かを伝えていた。

ここまでは聞こえてこないけれど、きっと全身全霊でやったことはみんなに伝わっている。

私は急に寂しい気持ちになってしゃくり上げて、うつむいた。

最後に猛のあんなプレーがみれてよかった。


「カヤ」

「猛…」

「幻滅したか?」

「ばか!」


松原さんの背中にのっかって困り顔で私のところへきた猛は、顔通り自信なさそうに言うので私は猛の背中を思い切りたたいた。


「ってぇー!なにすんだよカヤ」

「うるさいうるさい!いきなり呼ぶから何かと思ったら!超格好よかったじゃんか!

「まぐれだよ、まぐれ」

「まぐれでも…まぐれでも猛は輝いてた」

「うん…」

「お疲れ…様…」

「あんがと。ねぇカヤ」

「…なに」

「結婚しようか」

「ちょ、ちょっと監督ー!私の上でなに一世一代の――」

「うっさいよまっちゃん」

「えぇえー!理不尽すぎますよぅ!」


ばか。

そんでプロポーズかよ。

ずるいじゃん。

しかもおそいじゃん。


「何年間待たせたとおもってんのよ」

「まぁーまぁー」

「こんにゃろ…」

「でも結婚してくれるだろ?」

「するよ…してあげるっつのバーカ!」


突き飛ばしたら松原さんも巻き添え食らってしりもちをついた。

猛は痛そうだし、松原さん超困ってるし、選手達も不思議そうにこっちみてるし。

でも、うれしいよ猛。


「ずっとあんたのこと見てきたんだから、老いぼれていくのもみててあげるよ」

「じゃあカヤがババアになるのは俺がみてるから」

「ババアとかいうな馬鹿」


泣き笑いして、もう一度こづいてやった。

ねぇ、過去の猛。

今苦しい?

――でも、がんばって

私が居るし、それに未来の猛は、自分で輝くことは出来ないけど、たくさんの選手を光らせているから。



だから、待ってて




後書き
 えー…読んでいると分かるかと思いますが、収集が付かずまとまらなくなりました。
すみません;
でもあの話は本当に、今まで読んできたシーンの中でも一番感動しました。
がんばれたっつみー!

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