短編GIANTKILLING

□ガンバレ受験生シリーズ*達海編
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「勉強につかれちゃったあなたへ」



「あーんもう、あきたー!」

私は、音を上げた。

「あんだよー、まだきたばっかだろ?」

「いいや。猛が試合二つ見るくらいはいるんだけど」

「そうだっけ」


現在、ETU監督達海猛の部屋(クラブハウスの)である。

私はそのきったなくてせまーい部屋に小さなテーブルを持ち込んで英語の勉強に取りかかっていた。

別段物音とかは気にならないたちで、むしろ猛が真剣に試合のビデオを見ているという状況では、頑張らないわけにもいかないという気持ちになるので非常にはかどる。

が、しかしいい加減に疲れた。猛がDVDを入れ替えているのをいいことに英語への文句をつらつらと並べてやる。


「んー、よくわかんないけど。しゃべれればいいじゃない」

「ダメなのよ!大学受験はしゃべるより文法と読解力なわけ」


と、言っても猛に分かるはずもない。

彼は海外生活を経験しているため英語も話せるけれど、なぜか文法のことについて聞いてもさっぱりだったからだ。

どういうことだ、この男は。


「つってもよー、そーんな文法つめこんだって役にたたねぇよ。

戦術論しか言わない無能な監督みたいにね」

「それもそうだけどさぁ。ってかそんなモチベ下がるようなこといわないでよ」

「ニヒーッ。ごめーん」


心のこもっていない謝罪を聞きながら、文法書に顔をツッコンだ。

「もう」

「じゃあ、モチベあげに行こうよ」

「え?」


顔を上げると、猛はたのしげに笑っていた。


「グラウンド行こうよ。詰まったときはあそこが一番だ!よっしゃー!行くぞー!」

「え、え?わぁあっ!」


手を引かれて、クラブハウスを走って(途中永田さんに怒られながら)練習が終わって無人になったグラウンドに、猛と一緒にころがった。

空は非常に青くて、まぶしかった。


「まぁー、もしおっこっても俺が嫁にもらってやるから心配すんなって」

「もー!だからそういうこと言わないで――」

「一生懸命がんばってダメだったら、俺がなんとかするから」


急に真面目な声で言う者だから視線を投げると、猛は笑いながら「俺、頑張ってるお前が一番好きだし」と言った。

ダメだったら貰ってくれるだなんて保険かけられたら、やりたくなくなっちゃうって思ったけれど、そんな風に言われたら…頑張るしかないじゃない。


  ガンバレ受験生!


(よーし!戻ってがんばろ!)
(えー、もーちょっとゴロゴロしてこうよー)(あんた本当に私を応援してるの!?)
(にひーっ)

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