Other
□「もう一度」なんて言えない
1ページ/2ページ
今日も俺はアヤノと帰った。
その帰り道の途中で、
「…ねぇ、シンタロー」
「何だよ」
「夢羅とシンタローって…付き合ってるんだよね…?」
アヤノが突然そんなことを言う。
「は、はぁっ⁉…いや、まぁそうだけど…」
恥ずかしくて明後日の方向を見る。
「…夢羅ときちんと話してるの?」
アヤノの声の調子がいつもと変わった。
緊張した空気になる。
「…あんまり話してない」
そういえば、会うどころか話すこともまともにしていなかった。
同じ学校で、同じ学年で、同じクラスなのに…
「ダメじゃん、いつも私と話してばっかでさ…」
アヤノが怒った顔をする。
「夢羅は彼女なんだから、さ…」
アヤノは、ほらっと言って俺の背中を押す。
「今日はここで、ね。ばいばい!」
アヤノは一瞬複雑そうな顔をしてから、そう言い残して走り去った。
遠くなる背中を見送り、再び歩き出す。
「…久しぶりに会うのも良いか」
そう思って足を速めた。