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□初恋〜天京〜
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「天馬は好きな人とかいないの?」
俺はよくこの質問を投げ掛けられる。そのたびに俺はこう答える。
「うん、好きな人とか…そう言うの、よくわかんないし…」
第一、俺は好きな人という感覚がわからない。
サッカーが好き、秋姉の焼くケーキが好き、とかの好きとは、違うのだろうか?
それは、部活帰りの帰り道のことだった。
俺は信助と葵と帰っていた。
「今日の神童先輩のシュートかっこよかったよねっ!!」
「うんうんっ、霧野先輩のディフェンスもかっこよかったよねっ!!」
なんて、たわいもない話したあと、信助と葵は別れ道で帰っていった。
しばらく歩くと、河川敷の方でボールを蹴る音がした。
……薄暗くてよく見えないが、誰かがボールを蹴っているみたいだった。
こんな時間に一体……
河川敷に降りてみるとだんだんとボールを蹴っている人が見えてきた。
俺は呼び掛けてみた。
「剣城ーーっ!」
ふいにボールを蹴っている人影が振り返る。
「……天馬?」
「オレもやるよっ!」
オレが剣城のもとに駆け寄った瞬間、ふいに足が滑った。
「…うわっ!!」
「?!」
ドンっという音と共にオレは剣城の上に覆い被さる状態になった。
「…ったー……」
「………っ」
ふと蜂蜜色の瞳と目があった。
よく見ると、白い頬も少し赤く染まっていて……女の子みたいに可愛かった。
「は、…はやく……降りてくれないか?…//」
言われてから気づいた。
「あ…ごめん……」
剣城の上から降りた瞬間、自分の鼓動が高鳴っていることに気づいた。
「サッカー……やるんだろ?」
あぁ、そうか。これが好きって感情なんだ。
サッカーとも、秋姉の焼くケーキとも違う、全く違う感情。
「うんっ!!」
もう少し、この好きって感情を感じていようかな。