magi

□素直。
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幼い頃の自分は、汚い事をたくさんやらかしていたと思う。
醜くて、今思うと吐き気がする。
そんな自分の生き方を変えてくれた。
あの暗闇から救ってくれた。
それが、シンだった。




















――――――――――――――



「・・・」

自分の今回の標的は、王族だった。
何不自由なく暮らしてきた王の血を引く青年。

「名前、何ていうんだ?」

「・・・」

自分は青年の上にまたがり、喉元にナイフを突きつけているというのに。
青年は怯える様子も無く、自分に名前を聞いてきたのだ。
そんな奴は初めてで、少々動揺していた。
―変な奴。
それでも自分は口を開くことなく、少しづつナイフを喉に刃をつき立てた。

「名前」

「・・・・・・ジャーファル」

何度もしつこく名前を聞いてくるので、つい口を開いてしまった。
青年がその言葉を聞いていたかどうかは分からないくらい小さな声で言った。

「ジャーファルか」

「・・・!」

聞こえていたとは思っていなかった。

「うん、いい名前だと思う」

そんな事は言われたことが無く、どうすれば良いか分からなかった。
さっさと殺してしまえば良いものを。
青年はふっ、と笑うと自分の事をまじまじと見てきた。
どうせ王族にはこんな格好なんて醜いと思われて同然だ。
青年は小さい声で言ったのは、自分が想像もしなかったことだった。










「俺について来ないか」











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