桑ちゃんとコンコン

□吐息
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桑原の家庭教師を始めて数か月。
受験の日程も目前に迫り、勉強もいよいよ大詰め。
蔵馬の指導にも、自然と熱が入ってきた頃。


今日の桑原は、何だか落ち着きがない。
蔵馬が言ったことを何度も聞き返してくるかと思えば、ぼーっと窓の外に気をとられていたりする。
「桑原君、なんか今日変ですね。」
ついに、痺れを切らした蔵馬が声をかけた。
「え?」
「あんまり身が入らないみたい。」
「あ、わるい・・」
「いいんですけど。何かあったのかなぁと思って。」
「おう・・それが、今度、雪菜さんとデートすることになって。」
雪菜・・その名前を口にするだけで、耳まで真っ赤になる桑原。
大きな体に似合わない、そんな彼が可愛くて自然と笑みがこぼれた。
「そうなんだ。それは良かったですね。また話聞かせて下さいね。じゃ、次の問題は・・・」
「なぁ蔵馬、俺・・・」
マイペースに家庭教師に徹しようとする蔵馬とは裏腹に、桑原はまだ落ち着かない様子だ。
「どうしたんですか?雪菜ちゃんも大切だけど、受験も近いんだから。」
「いや、その・・・。」
「何なんです?桑原君らしくない。」
「も、もし、雪菜さんとそういう・・いい雰囲気になったとして・・。もッ、もしもの話だけどっ!」
しどろもどろになる彼がおかしくて、つい笑ってしまいそうになる。
「なったとして、何です?」
「・・わからねぇ・・っていうか、その、、俺、経験ないから!!」
「そんなこと、いいんじゃないですか?雪菜ちゃんなら、気にしないと思いますけど。」
「・・・・・・」
「桑原君?」
「・・・・・・」
「もう、何なんですか?」


「お、教えて下さい、先生っ!!」


突如、ばちんっという音と共に、顔の前で合された手。
「は?!」
蔵馬の目が、大きく見開かれる。
「いや、お前なら、何ていうか色々と・・。気付かれてないと思ってるだろうけど、何かと関係持ってること知ってんだ。」
精一杯、言葉を選んでくれたのは、彼の優しさか。
「頼む!俺にも一回だけ!」
「正気ですか?」
「お、おぅ・・・」
「でも俺、男ですし。」
「まぁ、一応な。」
「一応って・・・」
「実は・・その、浦飯とヤってるとこ、一回見ちゃったんだよ。」
「なっ・・・」
「こんなこと言うと、なんだけど・・。あん時、お前スゲェ綺麗で、正直忘れられないってのもあって。」
「・・・・・・」
「このとぉーーーーり!」
床に手をつき、擦れ擦れまで額を押し付ける。
「ちょっと、やめて下さいよ。」
「たのむぅーーーー・・・」
蔵馬の口から溜め息がこぼれた。
「参りましたね・・・」
「え・・・?」
「今夜だけですよ。」
桑原がぱっと顔を上げた。
「蔵馬!」


「満足できなくならなきゃいいけど、普通の女の子で。」
そういって、ベッドに横たわった。


シーツの上に広がる長い髪。
伏せ目がちに見つめてくる視線。
仰向けになる、たったそれだけのしぐさなのに、見たことのない蔵馬の表情に・・・
ごくり、、と大きく喉がなった。
「い、色っぺぇ・・・」


「脱がせて。」


囁く吐息に、それだけで無様にイってしまいそうだ。
「たまらん・・・」
強引に手をかけた。
「イタ・・もっと優しくしなきゃ。」
「す、すまん・・・」
少しずつ露わになる裸体。
あの時の・・・
あの日から、何度も夢にみた・・・
「・・ん・・・」
淡い乳首に触れると、背中がとくんと波打った。


そう、花びらを一枚ずつ剥すみたいに・・


そこじゃないよ


上手だね・・ん・・・


指じゃなくて、舌がいいな


急がないで、もっと・・・


ぁ・・・


そうだよ


んん・・・ぅ・・ハァ・・・


蔵馬の囁きは、聞いたことのない憂いを帯びて。
薄く開いた唇から漏れる吐息、苦しそうに歪んだ眉、喘ぐように呼ぶ甘い声。
今まで、一体どれほどの男たちが、欲情にかられてきたのだろう。
「っやばい・・蔵馬、後ろ向いてくれ。」
徐々に呼び覚まされていく、男の本能。
はじめは誘導してくれていた蔵馬だったが、もはや息つく暇もない。
力の抜けた体を抱き起こし、壁に手をつかせた。
「や・・・もう・・・あぁっ・・」
狭い穴を抉じ開けるように、自らのものを突き立てる。
動く度に、吸い付くように刺激され、我を忘れて突き続けた。
「あ・・・あぁぁ・・・ん・・っああ」
あまりの激しさに崩れ落ちるたび、太い腕に抱え込まれ、逃れられない。
「は・・んん・・・あぁ・・・」
歯止めのきかない若い欲情が、果てしなく打ち付けられる。
熱い息を吐き続けながら、この行為に及んだことを後悔していたとき・・
「ぅ・・・」
桑原のものがドクドクと波打ち、蔵馬の中で迸る。
抱えられた腕からやっと解放され、蔵馬は意識を手放した。


「これだから、初めてに付き合うのは嫌なんですよ。手加減ってものを知らないんだから。」
不機嫌に服を着込みながら、蔵馬が溜め息をつく。
「悪い・・・」
申し訳なさそうに頭を掻きながら、桑原は蔵馬の顔を直視できずにいた。
見てしまったら、さっきのことを思い出して・・・
体の中心がまた疼きそうになる。
いっそ、また押し倒してやろうか・・・
「一回だけですから!」
「お、」
どうやら、お見通しのようだ。
一度は声を荒げて萎らしかったのに、やっぱりこいつには勝てない。
「全く、今日は勉強のほうが全然進みませんでしたね。次までに、終わったところは復習しといて下さいね。」
「お、おぅ・・・」


「いろいろと。」
部屋を出るときに振り返った、悪戯っぽい笑顔。
思わず傍らにあったクッションに顔をうずめ、
(ホレテマウヤローーーーーーー)
と雄叫びをあげた桑原なのであった。



Fin


あとがき
いつも苛められてばっかりなので、たまには。最後のギャグは、旬じゃないけど、なんかずっと好きなんです。

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