企画物

□Merry Xmas
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夕方から降り出した粉雪が
クリスマスイヴの夜を白に染める

窓からそのロマンチックな景色を眺めながら想うのはやはりあの人で

「会いたかったな…ロー」

付き合って初めてのXmasだったのに
急なキャンセルなんてヒドイよ…

用意していた彼へのプレゼントはベッドの上に転がって
ラメゴールドのリボンは、ほわりと膨らむループを虚しく崩していた

ぐずりと鼻を啜り「あ、そうだ…」

私はおもむろに20cmのホールケーキが入る箱を開けた

「いただきま〜すっ」

黄桃ではなくローが好きなイチゴを二重に挟むフワフワのケーキは、一人で食べても至極の味

だけどこんなに…食べきれないよ

四分の一を平らげたらもうお腹いっぱい
そのままテーブルの上に放置して、ふて寝を決め込もうと転がるプレゼントを横目にベッドへ潜り込んだ

すると、ピンポ〜ン…

「え…、誰…」

こんな時間のチャイムは恐い
友達ならまず連絡がある筈だし

恐る恐る玄関に歩を進め
そっと覗き穴に顔を近づける

「あ…っっ」

ガチャ…!

迷わずドアを開けた
だって、そこには…

「「Merry Xmas!!」」

ほろ酔い加減のシャチと、ペンギン

そして

「悪ぃ…コイツらが、俺達だけまったりしけこむのは許さねぇって絡んできやがってよ…」

「ロー…っ」

住人の許可を得ずバタバタと部屋に上がり込んだシャチとペンギンのその最後に
苦く笑いながら佇むローの姿がこの目に飛び込んできて思わず涙腺が震える

「何このケーキ、食っていい?!」

テーブルに取り残されたままのケーキを勝手に貪りながら酒を飲み始めた騒がし悪友二人を余所に、不意にローが「これ…」と玄関先で何かをそっと目の前に差し出してきた

「え…?何…?」

「何じゃねぇ…プレゼントに決まってんだろが…あぁ、でも後で開けてくれ、奴らがうるせぇから」

少し照れ臭そうにそう言うとやっと靴を脱いだ彼は、私の横を通り過ぎる刹那
奥にいる二人に気付かれぬよう顔を耳元に押し当て…熱く囁いた

「奴らが消えたら、朝までたっぷり可愛がってやる…それで許せ」

「…っ」

ボッと顔から火を噴いた自分

その熱が収まるまで私は随分長い事
玄関に散らばる6個の靴を見据えていた








メリークリスマス/2013.Dec.

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