企画物

□視線の先
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いつもと変わらず、持て余す時間を潰しながら食堂でクルー達と戯れるシャチが不意にこっちを見た。

「……!」

端っこの席で一人ぼんやりしていた私はビックリして目を逸らす。

そして至極困惑した。彼の視線から逃げた自分とはすなわち、無意識にもずっと彼を見ていたという事で。

そう、彼はいつも私の視界にある。

だって彼の声とか匂いとか雰囲気を近くに感じていたくて…

だから笑う彼、怒る彼、しょげる彼、とにかく彼の一挙一動全てを心に留めていたいと視線が勝手に追い掛けてしまうんだ。

これって恋なのかな
…分からない

分からないからこの前船長に聞いた。
そしたら彼は笑ってこう言った。

「…行動の原理は感情」

大人な船長は私の髪を緩く撫でただけで、それ以上を教えてくれはしなかった。

次の日の夜、食堂でまた目が合ったシャチ。私はいつもと違い視線を逸らさずで、そしたら彼もまた逸らさないもんだから否応無く続いた無言の交錯。

「……」
「……」

すると、彼は逡巡の様を奥に秘めつつふらりと私に歩み寄ってきた。

そして

「どっちが先に言う…?」

「……え?」

「好きっ……てよ。」

「……」

あぁ、そっか
やっと分かった…





…私、貴方が好きなんだ

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