《2》

□デジャヴ
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この船に乗せられてどれくらいだろうか。
少なくとも3日は経っているであろう。

私はジャカル島から海軍の船に乗せられた時の事を思い出していた。

あの時は海軍本部へ向かい2週間程乗っていた。
しかし今回はどれくらい乗る事になるのかそしてどこへ向かっているのだろうか。

撃たれた脚はこの船に乗りすぐに治療された。
どうやら麻酔を嗅がされその間に弾を取り出し綺麗に縫われていた様だ。

しかしまだ痛みが酷い為、朝と夕方の食事の後に痛み止めの薬を飲んでいた。

そして私のいる部屋は簡素な、ベッドと椅子だけがある窓のない部屋であった。

手錠も外され私はベッドに横になっていた。

この部屋の扉も海楼石で出来ているのだろうか…

私は確かめる事はしなかった。
そもそも逃げ出す気力も体力もなかったのだ。

ビルジーグ・ガロンの元に手渡されればまたあの地獄の様な日々が続くのだろう。

そして今度は…
誰も助けに来てはくれない

そんな事を考え頭痛がしてきた。
その時…

ガチャリ

「よう名無しさん、どうだ」

私を撃ち、海楼石の手錠を嵌め、ビルジーグ・ガロンの元へと私を船に乗せた男…モスカム・ドルテが部屋にやって来た。

「痛み止めは効いてるな。あと飯はちゃんと食え」

そう言うと私の頬をべろりと舐めてきた。

「お前が少佐の女じゃなかったらなぁ。俺がたっぷりと可愛がってやったのに」

下卑た笑みを浮かべながら私を見下ろしそれだけ言うと部屋を出て行った。





私はただ天井を見つめていた。
この船に乗ってからはベッドから出る事も殆どない。

着させられた水色のワンピースがなんだかあの船にいた頃の患者服の様に思えた。

考える事はやはりハートの船の事。
今頃はもうサフル島も出航し次の島を目指してまた航海しているのであろう。

私1人が突然いなくなったからといって彼らの夢はぶれる事はない。


『俺はワンピースだ』


トラファルガー・ローのあの真っ直ぐな藍色の瞳がやけに懐かしく思えた。


私は分かっていた筈なのに。
私には何も出来ない…と。

自分を止められない自分の不甲斐無さに情けなさを感じていた。

その時…









どこーッんッ‼

突然の凄まじい爆音と振動で船が傾き部屋の椅子も倒れた。
何事だろうか。


「敵襲ッ‼敵襲ッ‼海賊船ッ‼」


扉の向こうからけたたましい怒号が船内にそしてこの部屋の中にまで響いてきた。


私は一瞬…デジャヴを感じた


この部屋の扉も外側から鍵が掛かっていて私は逃げ出す事も様子を伺う事すら出来ない。





ガチャッ!

突然勢い良く私のいる部屋の扉が開いた。

「来いッ!」

モスカム・ドルテが凄い剣幕で入って来ると脚の痛みもお構いなしに私を無理矢理引き摺る様に起き上がらせ外へ連れ出そうとした。

「ちょっ…!何…ッ!」

「お前…トラファルガー・ローの船にいたのか…!」

私を引き摺りながら男は額に玉の様な汗をかきながら睨んできた。

「あのつなぎは北の海、ハートの海賊団の物だな。お前も海賊に成り下がっていたとは…ますます父親にそっくりだ…」

何故この男が今、ハートの船の事を言うのかそして何故部屋から連れ出したのか、私は理解出来ずにいた。


「管理長ーッ‼船にッ!乗り込まれましたッ‼」

若い海兵がカービン銃を手に持ち男の元へと駆け寄って来た。

「てめぇらッ!何してやがるッ!皆撃ち殺せッ‼船は迫撃砲で沈めろッ‼」

普段口調だけは紳士的だった男…モスカム・ドルテが声を荒げていた。

まさ…か










ガチャッ!

「お前はここにいろッ!」

そこは薄暗い洗濯場の様であった。

私は勢い良く押し込まれそのまま床に倒れ込んだ。
脚の傷からは血が滲み出し水色のワンピースに染みを作っていた。

そして男は私をうつ伏せにさせまた後ろ手に海楼石の手錠を嵌め扉を閉めて外側から鍵を掛けた。










扉が閉まるとそこは暗闇へと変わり手錠を嵌められた私はうつ伏せから体勢を変える事も出来ず、冷たい床に頬を当てまるで捨てられた人形の様にただそこに存在していた。




















「助…けて…みんな…」

自分でも気付かない内に私は

助けを…求めていた










扉の外から聞こえる怒号や銃声。
もし…本当にハートの皆がここに来ているのだとしたら…


「私を…見つけて」


身体のチカラは抜け
呼吸すら苦しく感じる。

私は目をつぶり
耳を澄ましていた。

すると…




















バタンッ!

「名無しさんッ!!」


この声は…


バタンッ!!

「名無しさんッ!どこだッ!」




















「トラファルガー・ロー…」




















これはただのデジャヴじゃない

彼はここに…来る
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