《3》

□星空の伝言
1ページ/1ページ


静かな、夜だ

しかし…












私は船長室のベッドで…トラファルガー・ローの腕の中にいた。

「……」

「……」


じっ…と見ている


薄暗いランプの明かりと一緒に揺らぐ彼の長いまつ毛の影が私に向けられているのだ。

「あの…」

「……」

「……」

「何だ、言え」

がばり…
私は上体を起こし彼を振り返った。

「寝れ、ませんッ…」

「あ?」

「ちょっと、星…を見てきます。いいですよね?」

「……」

すると私の言葉にトラファルガー・ローは暫く考えそして少し気怠そうに起き上がった。

「行くぞ」

「…え?」

それだけ言ってベッドから下りると彼はいつものパーカーを羽織りスタスタと先に船長室を出て行ってしまった。










ガチャリ

甲板への扉を開けるとほわり…
暖かい空気が身体に纏わりついてきた。


「あれ…?」


私は扉を一歩出たところですぐに足を止めた。

「どうした」

既に甲板へと歩を進めていたトラファルガー・ローが振り返った。

「雪が…」

「あ?」

空を見上げると満天の星
しかし新月だろうか、月の姿は無かった


「雪が、降ります…」


何だろか、不思議な感じがした

風が無い…がしかし

空が、大気が、
やけに…重い





立ち止まったままの私を眉間に皺を寄せ見遣ったトラファルガー・ローはしかしまた歩き出すと手摺りに背中を齎せた。

「お前のその能力…」

私も彼の隣に佇み星空を見上げ始めた。

「海軍が欲しがる最大の理由」

「……」

「ラフテルを、知ってるか」

トラファルガー・ローは鋭く私を見据えながらそう聞いてきた。

「…いいえ」

「ワンピースがあると云われる島だ。だがその島に行くには色々条件が…ある」

私は空に思考を任せたまま彼の話を聞いていた。

「天候もその1つだ。大気を読み取り、操る…海軍がこの能力を手に入れた日には、この海は…どうなるんだろうなぁ」

「……」

口端を歪めながらそう言う彼を私はふと、見遣った。

「何だ」

「いえ…あ、いや…」

「……」

「知ってますよ…ラフテル。父から聞いた事、あります。」

「あぁ?てめぇ、今…」

「ごめんなさい、今…思い出したんです。父が昔、ゴールド・ロジャーに会った事があるって、話してたんですよ…その時に、聞きました。」

「何…?」

トラファルガー・ローが珍しく驚いた顔をした。

「…でも、それは今思えば…父が海軍にいた頃の話…って事ですよね。…あぁそうか、だからか…」

「…何が言いたい」

苛立ち始めた彼に私は苦笑いをしてからまた星を見遣りこう言った。

「…いや、何で父は…船や仲間を犠牲にしてまで私を海軍から守ったのか…」

「……」

「父はこの能力について何か情報を持っていた、私がその能力者だと分かっていた…。だから、ただ単に自分の娘を守ったってだけじゃなく、この能力をビルジーグ・ガロンから…海軍から、守った。私、あの時に…、船を降りる時に…一度だけ父に言われた事があるんです」

私はトラファルガー・ローの瞳を見据えた。


「何があってもこの海を憎むな…そしてこの海を守る為に、その身を海に捧げる勇気を持て…と。」


トラファルガー・ローの藍の目も真っ直ぐに私を見ていた。


そんな彼に、今…私は伝えたい事があった。


「船長?…もし私が、海軍に捕まった時は…この海の為に命を絶つ事を、許可して下さいね。」


そう言って、微笑んだ。

すると…










「名無しさん」

トラファルガー・ローが突然、力強く抱き締めてきた。

「船長…?」

「いいか…二度と言うな」

「……」


「お前が死ぬ時は…この腕の中だ。それ以外は許可しねぇ…」


じんわり…とその言葉に途端、私の視界が滲み出した。


そして私も彼の強く優しいその空気に身を委ねた。


「はい…」


トラファルガー・ローに
心を…包まれた



























今、初めて…気付いた事

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ