《3》

□嘘つき
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ぼんやり…
真っ白な思考の中
必死に、もがいた

母は私を産んで、喜んだだろうか
それとも迫る父の闇に…
私を恨んだのかな










「部屋に戻れ」

どれ位たったのだろうか…
意識を戻し目が合った途端、隣に座り私を見つめていた彼はそう言った。

トラファルガー・ローから伝えられた…父と母の事

そしてそれを隠す事なく伝えてきた彼の真意を深く心に刻まれた私は…



「…嫌、です」

起き上がりそのまま彼の首に手を回し強く抱き着いた。

「……」

「……」

しかし



「相手を間違えるな」

「……」

「お前はペンギンの女だろ」


彼は私の腕を解き立ち上がり


「…奴を抉らせると厄介だぞ」


にやりと口角を上げてそう言った。

「……」

「……」


溢れ出たところで…やはり空回りするこの想い。
私は苛立ちを隠す事なく立ち上がると彼を睨んだ。



「貴方は…私の悲しみが好きだと言った…痛みや歪みが、好きだと言った…」

「…それがどうした」

「じゃあ、私自身…は?」

彼もまた鋭く見据えてきたがしかし私は言葉を紡ぐ。


「愛し方が分からない、なら…」

「……」

「一緒に…探していけば…」

「名無しさん」

トラファルガー・ローが言葉を遮った。


「お前には出来ねぇだろ」

「……」

「お前に…ペンギンを捨てる度胸なんて、ねぇだろが」

そう言って彼は私の腕を掴みギリリと後ろに回すとそのまま腰を引き寄せ顔を近付けてきた。

「なら今……ペンギンを裏切ってここで俺に、抱かれるか」

そして触れそうな程に近い唇でこう言った。


「ペンギンとはガキの頃からの付き合いだ」

「……」

「…あいつの傷を癒せるのは、お前しかいねぇ」

彼は私の目を見据えその藍色の瞳を微かに細めた。

「奴に心を渡せ…お前の幸せは…」

「……」

「奴といれば…感じるだろ」


トラファルガー・ローはそう言うと

私から離れ


「…行け」


背を向けた。



別に私は…
幸せを求めてる訳じゃ、ない



そんな彼に私は自分でも驚く程冷静に…こう言った。



「背中を…向けないで…。私を、見て…トラファルガー・ロー」

「……」

「…貴方が、好きなのに…」



その言葉に彼は振り返った。
しかしその時…










コンコンコンッ…


「……」

「……」










コンコンコンッ


「お迎えだ」

「……」


トラファルガー・ローはちらっと私を見遣り扉へ歩を進めた。


ガチャ

「あぁ…船長」

「此処にいる、連れてけ」

トラファルガー・ローはそのままペンギンさんと入れ違いに部屋を出て行ってしまった。










「名無しさん?」

「……」

「此処で何してた?」

「……」

思わず俯いて唇を噛み締める私の様子を見たペンギンさんは扉の横に立ったまま少し恐い空気でそう聞いてきた。


「別に、何も…父と母の話を、船長から聞いただけです…」

床を見つめたまま答えた私。

「…そうか」

「……」

「行こう…おいで」

ふわり…と今度は優しく微笑み彼は私に手を差し出した。

「…う、うん」

私は重たい足を動かし歩み寄るとペンギンさんの手を握った。


ギュッ…と握り返された手
…少し、痛い


しかしペンギンさんは構わずその手を引き前を見据えたまま歩き出した。




傷付く事は恐くない…ただ、
誰かを、傷付けたくない




























それは私の強さか
…それとも弱味となる、のか

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