《4》

□嘘つき
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目が覚めるとペンギンさんが私の手を握り頭を撫でていた。

「あ…れ…?朝?」





部屋を見遣ればまだ船長室。
そして私は部屋着に着せ替えられていた。

「もう昼だ…具合いはどうだ?」

ペンギンさんは優しく微笑んだ。

「いえ、あの…全然大丈夫です。」

私は身体を起こそうと腕に力を入れた、が

「まだ寝てろ…もうすぐベポが飯を持ってくるから。」

そう言ってまた寝かされた。
その途端…

ぐぅぅぅ…

「あ…」

お腹が鳴った。

「ふふ…腹の虫が元気なら心配なさそうだな。」

「ハハ、ハ…す、すいません…」

私は紅くなった顔を布団に隠した。

「昨日、何があったか覚えてるか?」

「……」

「分からないか?」

「……」

「…嫌なら、言わなくていい。」

ペンギンさんは布団を被ったままの私の頭をポンポンと優しく叩いた。

「じゃあ船長、操舵室に戻ります。」

え…

「あぁ」

トラファルガー・ローもいる、のか…?

「名無しさん、また後で来る…ゆっくりしてろ。」

バタン…
ペンギンさんは船長室を出て行った。





「…ゥぅ」

だいぶ時間が経った…
息苦しいがしかしトラファルガー・ローに顔を合わせずらい私は布団から出る事が出来ない。

「ご、ごぼふッ…!」

堪らず噎せた。

すると、ガバッ!

「いつまで不貞腐れてやがる」

トラファルガー・ローに布団を剥ぎ取られた。

「ふ、ふ、不貞腐れてなんか…」

私はまた布団を被った、が…

ガバッ!

「起きろ…アホが」

また剥ぎ取られた。

「ちょっ…ッ!」

私はまた布団を被ろうとした。

「てめぇ…いい加減にしろ」

ぴたり…
その低い声に一瞬で心が両手を上げた。

「な…何ですか?また…怒るんですかッ…?私は…」

「名無しさん」

「…は、はい…」

するとトラファルガー・ローはまだ布団の中に恐る恐る顔を窄める私の前髪をそっと掻き上げると、瞼に唇を乗せてきた。

その温かさに…心が緩む。
しかし、


「俺が嫌いならちょうどいい…」

「……」

「俺もてめぇみてぇな女…面倒臭せぇ」


紡がれた言葉は、冷たかった…


「くだらねぇ色恋なんて…クソだ」


トラファルガー・ローは私から離れるとまたいつもの椅子に戻った。

「出てけ…」

私はゆっくりと身体を起こす。

「船長、一つだけ…いいですか?」

「……」

「私、昨日の事…覚えてる…」

彼の背中を見遣る。

「私を、触った事…私を、怒った事。浮かんできたあの言葉も…全部覚えてる。」

「……」

「永遠だって…言ってくれたのは、あれは船長じゃ…ないんですか…?」

彼は振り返ってくれない。

…泣きたい
でも、私は笑った。

「ハハハ…もういいですよね。もう船長の事、思い出す必要なんて、無い…」

ぎゅぅ…とシーツを握り締める。

「さよなら…」

かばりと布団から出た私は船長室を飛び出した。










城へ戻ろうと船の梯子を下りた。
すると

「あれ?何してんだお前?」

買い出しの帰りか、荷物を沢山抱えた私服のシャチとクルーが船へ向かって歩いて来ていた。

「何でもない…城に戻るね。」

私は足を止める事なく彼の横を通り過ぎようとした。

「ほい待ったッ!」

「え…」

両手が塞がっているシャチは私を身体で通せんぼしてきた。

「な、何?」

「へへ…俺も行く。」

「は?」

「はいよッ!後は頼んだ。」

ドサリ…
彼は大量の荷物を地面にほっぽり投げて私の手を掴み来た道をまた戻りだした。

「ちょっ、ちょっと!シャチさんッ…!コレ、どーすんすかッ!」

同じく荷物を抱えるクルーが唖然と立ち尽くす。

「2往復で行けっだろ!お前なら出来るッ!じゃあな!」

そう言ってひらひらと手だけを振って見せた。

「シャチ?」

「城に戻るのは船長の指示か?」

「ち、違うけど。」

「じゃ、デートしよデート!」

「へ…?」

彼はニシシと嬉しそうに笑いながら繋ぐ手をブンブン振り回し歩いていた。

























…2回目のデート
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