《4》

□君の言の葉
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「今日は楽しかったです、ありがとうございました。」

ペンギンさんとそして宿まで一緒に来たトラファルガー・ローに私はペコリと頭を下げた。





「風呂入って着替えたらペンギンの部屋に来い」

「…え?」

雪遊びに疲れ、すっかり寛ぐ気満々だったのだが。

「何で、ですか…?」

間の抜けた顔でトラファルガー・ローを見遣る。

「出航前夜の宴だ…街に出るからまたあの格好で来いよ。」

「あの格好…?」

次にペンギンさんを見遣る。

「フフ…娼婦だ。」

「はぁ…あれ?でも…私が夜の街に出てもいいんですか?もし他の海賊に会ったりしたら…」

一瞬の沈黙。

「大丈夫だろ…ねぇ、船長。」

「あぁ」

「……」

微妙な空気。

「分かりました…じゃあ支度終わったら、行きます。」

彼らと廊下で別れ急いで風呂に入った私は、グレーのキャミソールワンピースの上にコートを羽織り帽子を被って、ペンギンさんの部屋へと向かった。


コンッコンッ

「……」

コンッコンッ

「また、だ……何で?」

何度ノックをしてもやはりペンギンさんは出てこない。

「お風呂かな…いや、でも船長もいるし…」

…仕方ない。

ドンドンドンドン!

ノックする手を拳に変えこれでもかと強くドアを叩く。

すると

ガチャ…

「うるせぇ…」

「え……」

顔を出したのは…知らない男。
しかも

「何だぁ…?俺はデリヘルなんて頼んだ覚えねぇけど…」

タトゥだらけの厳つい顔は明らかにカタギではなくそして何か勘違いをしている様だ。

「ガヘヘヘ…まぁちょうどいい、相手してもらおうかぁ?お姉さん…」

「ぎゃあ…!」

男はギラリと目を光らせると突然手首を掴み部屋の中へと私を引き摺り込んだ。

「す、すいません!部屋を…間違えたんです!」

「いいんだ、気にするな…」

「い、いや、気にします…!」

ボフリ…ベッドに倒される。

「やめて、下さいッ!」

「あんたが自分から来たんだろが…金は払う、いくらだ?」

上に跨がれた私はその男の香水の匂いに顔を歪めた。

嫌な、匂い。

咄嗟に


「…モスボル」


小さな空気の弾を1つ


「ごめんなさいッ!」


男の目に撃ち込んだ。


「ぐぅわぁぁ…!」


途端、両手で目を押さえた男はベッドから転げ落ちのたうち回る。

私は扉へと走り出した。

「ちくしょう…待ちやがれ!」

「きゃぁあ…!」

しかし廊下に出たところで後ろから抱き付いてきた男と共にドサリと床に倒れ込んだ。

「何もんだぁ?お姉さん…」

「ぐぅッ…」

「まさか刺客か?…あぁ?」

髪を掴まれまた部屋へと戻されかけた…その時


「"ROOM"」

…ブゥーー…ン

「"シャンブルズ"」

「ぅわ…っ」


ゴロリとトラファルガー・ローの足元に転がった私。
と、同時にペンギンさんがその男を蹴り倒しガチャリと頭に銃を当てた。

「懸賞金3800ベリー、南の海・ジャンボ海賊団のルイス・ベントラーです。」

海賊…

「て、てめぇら!北の海の…ハートの海賊団ッ!」

「名無しさん、お前が勝手に部屋を出た理由がようやく分かったな。」

「へ…?」

何だか楽しそうなペンギンさん。

「俺の部屋は反対隣だ。」

「は……」

私は…いつも違う部屋の扉を叩いていた、のか。

「部屋に戻れ、アホが」

「え?は、はい…」

ジロリとトラファルガー・ローに睨まれた私は足を絡ませながら自分の部屋へと駆け込んだ。

バタン…

扉に寄り掛かり耳を澄ます、と


「やめろぉぉ…!俺が何したってんだぁぁ…!あの女が勝手に来たんだろがぁぁ…!俺はただ、船の修理をしにこの島に来ただけだぁぁ……、も、戻してくれ!頼む!戻してくれぇぇぇ…!!!」


断末魔の様な叫びが隣の部屋から響き渡る。


…ガチャ

「せ、船長…?」

暫くすると、何事もなかったかの様にトラファルガー・ローが私の部屋に入って来た。

「あの男、は…?」

「今、ペンギンがパーツを雪に丸めて崖から転がしてる」

「え、えぇぇ……」

「クク…お前が部屋を間違えた、それだけの理由であの海賊団の旅は終わった…運の無い男だ」

「あ、あ、あ……」

どよーん…
私は心の中であの男に渾身の
…土下座をした。




















カラカラリン…

宴の酒場に着くと、クルー達は奥の席を陣取りワイワイと酒を酌み交わしていた。

「船長!遅かったっすねッ?何かあったんすかぁ?」

クルーがトラファルガー・ローとペンギンさんに席を譲りながら聞いてきた。

「あぁ…あいつに聞け」

トラファルガー・ローは口角を上げチラリと私を見遣ってから、ソファ席に座り小さなコップに注がれた強い酒を飲み始めた。

「なになにぃ?教えろ、名無しさんッ!」
「お前また何かやらかしたんだろ?」
「派手にすっ転んでパンツ丸出しになったとかッ?」

やいのやいのとおちょくられながら手を引かれ私もクルー達の騒ぐ席に着く。

「あ……」

すると正面の席に、シャチ。

バチリと目が合ったがすぐに逸らされた。

「てかお前さ、その目どしたんだ?」
「そうそう、俺も気になってた。」
「変なメガネみたいッ!アハハ!」

「ハハ…これは、ちょっとね。まぁいいから、飲もうよ!」

「よし、じゃあみんな揃ったし始めっかッ!せーの!」

「「「「乾杯ー!!」」」」


雪神の島、最後の夜
宴が今…始まった。

























…今宵の雪は、どんな色
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