*side*

□マジで泣きたい
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*初めての食堂*

初めて食堂に来た名無しさんを見た時、俺は船から飛び降りようかと思った。

治療着から覗く名無しさんの細い手足は擦り傷だらけだった。
綺麗な顔にはでかい擦り傷が目立ってて。

手首には包帯、首にはダガーの跡が薄っすら見えた。
痛々しくて直視出来なかった。

あの日は本当に気付かなかったんだ。
派手に蹴りくれた奴がまさか女だったなんて。

それも見てみろよ、髪は綺麗な栗色で目は珍しい翡翠色だ。
その辺の酒場の女なんか目じゃねぇ。

いや、別に変な意味じゃない、ホント。

それなのによ…。

あの傷を全部俺がやったのかと思うともう無理っ!
しかも最後気絶させたのも俺だしっ!

勿論あの時、殺すつもりなんてなかったんだ。
ガキを無意味に殺す程俺は歪んじゃいねぇ。

だけど最初っから女だって解ってればあんな風に転ばせる事すらしなかったのに。

食堂で名無しさんは俺の顔を見て逃げた。
俺も折角の謝るチャンスを自分から逃した。

でも実際名無しさんが目の前に来たら申し訳なくて顔も見れなかったんだ。

俺だって謝ろう謝ろうって思ってる。
お陰で昨日は一睡も出来なかった位だ。

でも俺は思うんだ、コイツは絶対船に残る。

船長が最初に倉庫に入れなかった時からピンときてたんだ。

いや違うその前からだ。
ペンギンが女を拾うなんて事、たぶん初めてだ。

とにかく色んな偶然と必然が重なったて訳だ。

俺にはまだ何も言ってこないが、船長とペンギンで名無しさんの事を色々調べてる。
どうやら訳ありらしいな。

俺にも何か解ったらすぐ報告しろとか言うけどよ、そもそも名無しさんは俺と話なんてしてくれねぇんだから解る訳ねぇっての。

だから俺は船長に願い出たんだ。
ちゃんと謝りたいし俺が傷物にしたんだから、せめて傷が治るまではベポじゃなくて俺に世話させてくれって。

そしたら船長何て言ったと思う?


「お前は下心があり過ぎる」


何かもう俺は泣きたくなったねマジで。

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