*side*

□会いてぇ!
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*島の酒場*










あー、つまんねぇ。









久々の島、久々の酒場の女。
俺は思いっ切りハメを外すつもりだった。

酒場に入ればすぐに女が寄ってきた。
海賊って意外とモテるんだ。
俺ちょっとカッコいいし。

短い丈のスカート、長い爪、紅い唇。そして甘い香水を漂わせて、女達は俺にベッタリすり寄ってくる。

両手に華ってやつだ。

おれも女の肩に手をまわして酒を楽しむ。
それはいつもと何ら変わりない光景だった。

なのに…


つまらねぇ。
この飯、名無しさんも美味しいって喜ぶだろうな、とか
この女の飲んでる酒、名無しさんも好きそうだな、なんて。

俺はいつの間にか名無しさんの事ばっか考えてたんだ。

すると右隣の女がこう言ってきた。

「私の部屋に来ない?一人じゃ淋しいの。」

今までの俺だったらガッツポーズする所。
がしかしだ、俺はその言葉を聞いてこう思った。

名無しさんも今頃部屋で一人、淋しくねぇかなってさ。

女だから島にいてもハメ外す楽しみなんてない訳だ。
名無しさんは特に今はまだあんまり船から出さないって船長も言ってたし。

あいつの過去を知れば知る程、守ってやらなきゃって思うんだ、俺は。

だから俺は土産の料理と、女と同じ酒を店主に頼んでから隣にいる女にこう言ってやった。

「お前はいい女だが、何処にでもいる女だな」

ギャーギャー喚く女を後に、俺は走って船に戻った。


名無しさんに会いてぇー!って叫びながら。

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