*side*

□最低だ俺
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*あの時*

ただ疲れてただけだなんて、
俺の理由はそんなんじゃねぇ。

あの日、夕飯を食いに俺は食堂に行く途中、船長とばったり会ったんだ。

宴の夜以来、まともに顔を合わせてなかったから俺は何だか気まずくてよ。

挨拶だけして通り過ぎようとしたんだ。

そしたらよ、呼び止められたんだ船長に。
宴での事もあるし、何か嫌な予感がしたんだ。

けど俺は、あの人の為に死ぬ事は出来ても、名無しさんの事だけは絶対に譲れねぇんだ。

俺だって船長は恐いさ。
あの人の眼は悪魔より冷たいんだ。

けど呼び止められて、俺から言ってやったんだ。
「名無しさんは俺の女です」ってよ。

そしたら船長はその冷たい眼を光らせて、俺に言ってきた。
「アイツはお前に惚れてない。アイツに聞けば分かるぞ」と。

俺は狂いそうになった。
体中がふるふる震えたんだ。
今の俺なら魚人島まで素潜りで行けるって、そう思えたんだ。

それからはもう駄目だ。
今までの俺がどんな俺だったかなんて、忘れちまった。

酒瓶を6本持って名無しさんの部屋に行った。
そんなつもりはないつもりだったけど、きっと俺は心の何処かで名無しさんを酔わせてしまおうと、そんな事考えてたのかもしれない。

俺の質問に誤魔化す様に曖昧に答える名無しさんを見て、このままじゃホントに他の野郎に取られちまうって、急に何かが込み上げてきたんだ。

気付いたらもう押し倒してた。
抵抗されてまた焦りを感じた。
他の野郎に取られるくらいなら、今ここでコイツを壊してしまおうって、そう思っちまったんだ。

最っ低だ俺。
結局自分で名無しさんを遠くへやっちまった。

元に戻れるか?
いや、もう戻れる訳ねぇか。

俺は予感がしてたんだ。

だから言ったろ?
そのうち俺、壊れそうだって。

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