*side*
□お前だから
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*忘れたい夜*
俺の真意とは何だ?
真意とは偽善か
それとも欲望か
俺はあの夜の事は思い出したくもない。
酒に酔い俺に甘え
跪いて俺の身体に顔を埋める名無しさん。
俺が舌を出せと言えばあいつは出した。
舐めろと言えば俺を舐めてきやがった。
途端あいつが安っぽい女に思えた。
あいつをこのまま甘やかしていたら
いつかきっとでかい傷を負いそして戻れなくなる。
何よりあいつが俺みたいな下らない男の餌食になるのが嫌だった。
あの時だって俺はいくらでもあいつを好きな様に出来た。
だが名無しさんは駄目だ。
そんな女に成り下がってはいけない。
去り際に俺が捨てた言葉に揺れたあいつの瞳が頭から離れない。
だが俺の感情なんてのはどうでもいい。
ただ名無しさんがこの先、他の男に邪淫な扱いなんてされてたまるか。
シャチには悪い話だが、名無しさんが別れを選んだのは正解だ。
名無しさんのシャチへの感情は、あれは愛でも恋でもない。
あのまま2人が一緒にいてもいつかそのうち歪が生まれた。
シャチは名無しさんに物足りなさを感じ、そして名無しさんはシャチを受け止めきれなかっただろう。
独りになった名無しさんは観測ノートを涙で濡らしてたな。
だがこれであいつはこれから先、もっと強くなり、もっといい女になっていく。
そしてとうとうそんな独りの名無しさんを船長が守りに入った様だ。
シャチの奴はどう出るんだか。
あの男は諦めが悪過ぎる。
まぁ、この俺はというと暫くは奴らを見守るしかなさそうだ。
ただ1つだけ言いたいのは…
あの時俺はお前だから
あんな言葉を言ったんだ。