*side*

□海に捧ぐ血
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*悪夢の3日間*

名無しさんとの島での2回目のデートだ。
ペンギンもいたがまぁ今回は特例で良しとしよう。

俺には目的があったんだ。
アレだ、ほら。
名無しさんの誕生日プレゼントを買うってやつだ。

1ヶ月間違えるという大失態を犯した俺にとってはこの島が最初で最後のチャンスだったんだ。

名無しさんとペンギンを店の外に待たせて俺は目に入った小物屋へと足を踏み入れた。

からりんと歓迎のベルの音と共に声を掛けてきた店員に尋ねた。

「可愛いペンは置いてるか?」

俺より若いな、その野郎は気持ち悪い作り笑いでこう言ってきやがった。

「ご自身でお使いですか?それともプレゼントでらっしゃいますか?」

その言葉に苛ついた俺はサングラスを外してそいつを睨みながら応えてやった。

「惚れた女にやるんだ。文句あんのか…あ?」

するとその野郎は作り笑いを止めてすぐに女物のペンをあるだけカウンターに並べ始めた。

すぐに…俺は見つけたんだ。
23本並べられたペンの中から。

名無しさんの色だ。
良く晴れた日の空の青。

「これこれ!これにするわ。ちゃんと綺麗に包めよ。」

そして俺は勿論ちゃんと金を払って店を出たんだ。

外で待つ2人の所に戻れば不思議そうに袋に目を遣る名無しさん。

あぁ、ペンギンの野郎が一緒じゃなけりゃな。

今すぐにでも名無しさんに渡して名無しさんの喜ぶ顔が見たい。

そんな事を考えながらペンギンのケツに突然の蹴りを1発かましてやった。





しかし…だ。

その時は突然やってきた。
名無しさんが…消えた。





下着を買うなんて言いやがって。
余りにも遅いからペンギンと店の中に入って店員に聞いた。
そしたら名無しさんの奴、店に入ってすぐに裏口から出たっていうじゃねぇか。

俺はパニクった。
こんなに混乱したのはいつ以来だ。
とにかくまったく思い出せねぇくらいだ。

ペンギンはすぐに電伝虫で船長に連絡を入れた。
俺はそれが終わるのを待たずに裏口から通りを見遣った。

右手に海軍の駐屯地が見えた。
名無しさんの行く先は…そこだ。

ペンギンも連絡を終えると珍しく焦った様子で俺を伺ってきた。
右手の駐屯地を指し示せば同時に俺達は走り出してた。



すぐ異変に気付いた。
十字路を挟んだ向かいの建物の入り口に海兵が2人、白い制服を赤に染めて倒れてたからな。

救助に来たばかりの海兵達がばたばたと銃を手に走り回ってたんだ。

平和ボケしたそんな奴らを横目にさらに先へと進む。

しかしそこまでだった。
駐屯地に変わった様子は見られない。

もう1度電伝虫で船に連絡を入れればすぐに船に戻るよう船長命令が出た。

俺は勿論、ペンギンですら今ここでこのまま船に戻る事を躊躇した。

けど仕方ねぇ…船長命令は絶対だ。
感情だけの単独行動には力なんてねぇって事を知らねぇ程俺達はガキでも馬鹿でもねぇからな。

大事な仲間を…名無しさんを守る為ならなおさらだ。





船に戻り俺達はログが溜まってからもサフル島に停泊したまま、得意先の情報屋からの連絡を待った。

その間のこの船ときたら…
立ち上げ以来初めての事だ。

飯の時も普段の仕事の時も、誰一人として口をきかねぇ。

船長もペンギンもまるで既に戦闘中かのごとく鋭いオーラを放ち、俺に至っては10分に1度海に向かって雄叫びを上げてたんだ。



そして来た。
名無しさんが居なくなって丸一日。



やっと情報屋からの連絡が入った。
ビルジーグ・ガロンと連絡を取る男の電伝虫の盗聴に成功したんだ。

それから俺達はまず次の島を指すエターナルポーズをサフル島で手に入れそして盗聴した相手の電伝虫の念波を探知する情報屋と連絡を取りながら、名無しさんを取り返すべくやっと…出港した。



名無しさんが消えて3日目の夕刻…見つけた。

こいつら絶対殺す。
一人残らず…だ。

そして名無しさん、お前にも絶対…罰を与えてやる。

平穏な航海に鈍っていた身体を奮い立たせ俺は、ダガーと小銃を手に持ち糞みたいな海軍の船へと真っ先に乗り込んだ。

柔な海兵相手じゃ何の刺激にもならなかったな。

俺達はとにかく無駄に頭数だけ一人前の奴らをばたばたと血の赤に染める事に徹し船内の捜索を船長に任せた。

そりゃ全く不満がないと言えば嘘になるけどよ。
出来れば俺が名無しさんを見つけて抱き締めたかった。

けどそんな事はこの時はどうだっていいんだ。
それがこの船の…俺達のやり方だからな。



船長はすぐに名無しさんを見つけた。
がしかしベポが腹を撃たれてた。

船長の指示でペンギンはベポを、俺はといえばバラバラになったこの胡散臭い男の後処理ときた。

甲板に運び海に放り込むその時、その男は命乞いしてきやがった。

だから俺はにんまりと口角を上げてこう言ってやった。

「てめぇの罪の償いはこんなもんじゃすまねぇぞ。あの女は俺達の宝だ。海賊の宝に手を出したてめぇを…しかし俺は許そう。何故ならてめぇのその血を…今からこの偉大なる航路に捧げてやるんだからな。」

俺はにかりとそいつの最期に笑顔を捧げてやってからバラバラのパーツから脚を選び取り、名無しさんとおなじ太腿に小銃を押し付けそして3発ぶち込んだ。

未だ悲鳴を上げ続けるそのゴミを俺は夕暮れ時の美しく霞むピンクの空に向かっで放り投げた。










やっと終わったんだ。
やけに長い3日間がよ。

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