*side*
□俺は腰抜け
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*風呂場*
うぉぉぉい…嘘だろ。
名無しさんが船長に抱かれたとでも言うのか。
それは何かの間違いだ。
そうに決まってるだろが。
名無しさんは船長の女じゃねぇ。
だからアイツが抱かれる訳がねぇ。
話を聞けば倉庫に入れられた日の夕方ベポは名無しさんを船長に預け、夜迎えに行った時には風呂場で裸のまま蹲って放心してたって言うじゃねぇか。
最悪だ…
まさか無理矢理か?
いやけどさすがに船長も名無しさんにはそんな事しねえって俺は信じてたんだ。
しかしだ…匂いがしたんだ。
名無しさんから女の匂いが。
アレは、何だ、フェロモンてやつか。
名無しさんのいる倉庫に行くと言うベポに泣きながら土下座して一緒に連れてってもらった時だ。
名無しさんに会えた喜びに俺は震えきつく抱き締めアイツの空の匂いを嗅いだ。
けどよ…アイツの匂いは空じゃねぇ、女の匂いだった。
その時の俺の心はまるで空島まで突き上げると云われるノックアップストリームの様に渦を巻きそしてそのままぶっ飛んだ。
わざと名無しさんにひっついて何度も何度も確かめた。
…間違いねぇ。
男の跡を感じる名無しさんに俺は無性に腹が立ったんだ。
名無しさんを問いただせばあからさまに動揺しやがった。
嘘でも違うと、顔色変えずに言ってくれたら俺はどんなに救われただろうか。
ぷつりと何かが弾けた
…もう自分を抑えらんねぇ
ベポがいるのも構わず俺は力任せに名無しさんの口内を犯した。
無理矢理舌を絡め取り抵抗する気力すら与えなかった。
名無しさんが他の男に抱かれるくらいなら、その前に俺がこの手でぶっ壊してしまおうかと…そう思いながら。
いやけどそれはよ、最初から出来ない話だったんだ。
あれは本当にたまたまの偶然だ。
大風呂に名無しさんがいた時、俺は何もない風呂場の床ですっ転びそうになる程驚いたもんだ。
がしかし俺に戸惑い怯えるアイツに余計苛ついた。
なんで船長には抱かれて俺には怯えるのか理解不能だった。
震えながら懇願されて煽られた。
嫌がる名無しさんに無理矢理ねじ込む自分を想像して下半身が疼いたりもした。
けど名無しさんは…駄目だ。
コイツにそんな俺を見せたらもう2度と…笑えねぇ。
名無しさんも、俺もだ。
恐がらせない様に裸のアイツをただ優しく抱き締め拭いてやる…あん時の俺に出来る事はそれだけだった。
やっぱり俺は腰抜けか?
あぁ、何とでも言えばいい
それでも俺は…幸せだ