《4》

□優しい男
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結局、ハートのクルー達と一緒にリンも食堂で夕飯を済ませてから私達は城へ向かう為、船の梯子を下りた。





すると

「あれ?」

そこにはトラファルガー・ローと厳ついドン・ジョンソンがいた。

「おぅ!姐さん!リンちゃん!」

「どうしたんですかッ?何かあったんですか?」

「こんばんは!ドンおじさんッ。」

リンと私は笑顔で歩み寄る。

「リンちゃん、昨日はありがとなぁ。国王の奴、今日は二日酔いでヘバってるって?まったく柔な男だ…ドハハハッ!」

「はいッ…でも父はとても嬉しそうでした。18年ぶりの仲直りですから!」

どうやら二人の話によると昨日あの後、国王様とドン・ジョンソンは朝まで城で飲み明かしたらしい。

「そうだぁ姐さん、トラファルガー君に何とか言ってくれぇ…うちの若い衆がこれを中まで運ぶと言ってるのに、此処まででいいと俺を突っぱねるんだぁ。困っちまう!」

「あぁぁ…こんなに…」

そういえば武器を運ぶと言っていた。
見ればドン・ジョンソンが持ってきたそれらが山積みに置かれている。

「でもこれは…船長の能力で乗せたほうが早いですよね?船長。」

「あぁ」

「何ぃ…?そうなのか?」

「さっきからそう言ってる」

真顔のトラファルガー・ロー。

「それに此処は海賊船ですから、余り部外者は入れないんですよ一応…すいませんッ。」

申し訳なさそうな私の言葉に

「ドハハハッ!リンちゃんはいいのに俺は駄目かぁ!まぁ…実は俺が姐さんに会いたかっただけっていう下心を見破られちまったって感じだろうなぁッ?これは一本取られた!」

厳つく納得したドン・ジョンソンはすると今度はガチャリと私にある物を差し出してきた。

「これを…姐さんに。」

「うぁ…ッ!」

受け取ったその重さに私の腰がまた…
ピキった。

「こ、これは?」

「よくぞ聞いてくれたぁ…これは組み立て式ランチャー。クズ共を一発で粉々に吹き飛ばぁぁす!」

「す、すいません…ちょっと下に置きます…」

ゴトリ…

「普段はバラして持ち歩けばいい。そしていざという時は、組み立ててドォーーーンッ…!だ。」

「は、はい…」

しかし
明らかに持ち歩くような重さでは無い。
そしていざという時に組み立てている場合でも、無い。

「明日の朝出航か…淋しくなりやがるちきしょうめッ…」

突然、素肌に羽織っていた皮のジャケットのファスナーを引き剥がしたドン・ジョンソンは

「トラファルガー君、俺からも姐さんを…宜しく頼む。またいつか必ずこの人を…ポルドに連れて来てくれ。」

そう言って涙を…厳つかせた。

「あぁ…分かった」

「次に会ったら姐さん…是非、ライルと遊んでやってくれるか?」

私も、泣きそう…

「は、はい…勿論ですッ。あ、あぁ、そうだ…」

唇を噛み締めながらゴソゴソと部屋着のポケットから封筒を取り出す。

「これを…ライルに…」

それは約束の、ライルへの手紙。
私は涙目でドン・ジョンソンに差し出した。

「ドハハハッ!オーライ!ありがとう、姐さん…あいつ、腰抜かすぞぉ!」

「ハハハッ…」

「じゃあ…仁義を通した姐さんに、もう一つ土産ッ。」

「へ…?」

「"命は奪っても奪われるなぁぁッー!!"」

「はい…?」

「うちの初代クソジジイから受け継がれる、端街を生き抜く為の家訓だ…姐さん、貴方に捧げよう。」

「素晴らしい、言葉ですね…でも、そんな大切な言葉を頂く訳には…」

「気にするなぁ…ただ、心の引き出しにそっとしまっといてくれればそれで…いいんだよぉ。」

「は、はいッ!では…有難く頂戴致します!」

私達はガシリと手を握り合った。

「ムカつくクズがいたらいつでもこの…ドン・ジョンソンまで。じゃあ、また会おう…」

胸をドンと叩き厳つくキメたドン・ジョンソンは背を向けた、が…

「あの!ソン・ジョンドンさん!」

私は彼を呼び止める。

「ドン・ジョンソンなんだ。」

「私…貴方やライルに出会えた事、決して忘れませんッ…いつかまた会う日までどうか、お元気で…」

「ドハハハ…ァァ!」

涙を隠したドン・ジョンソンは、若い衆を引き連れ厳つく帰って行った。





「優しい人…」

その背中を見えなくなるまで私は見遣っていた。

「ドンおじさんとも仲良くなるなんて、さすが名無しさんさん…」

リンはぼそりと呟き私の手を握る。

「さぁ!行きましょうかッ。」

「ん…」

「ではローさん、名無しさんさんお借りしますねッ。」

「船長、行ってきますッ。」

トラファルガー・ローに会釈して私達は踵を返した。
すると、


「名無しさん」


…呼び止められた。

「は、はい…」

ゆっくり、彼を振り返る。
視線が絡まったやけに揺らぐその瞳はまるで蒼い…人魂。


「もうこれ以上、船を止める事は出来ねぇ。何があっても明日、出航する」

「……」

「別れを心に…刻んどけ」


彼が言わんとする事とは…

「は、い…」

私はコクリと頷きまた歩き出した。





彼の言葉、彼の声
そして藍色の瞳…

何故私は…引き込まれてしまう

…忘れた筈の人なのに

























…出航前夜
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