書庫<幕恋:短編メイン>

□白檀
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燻る芳香に酔いたい・・・

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ふぅ〜、やっぱりお庭が広いだけに、落ち葉の量もハンパないわ。
集めても集めても、どっかからまた出て来るよ〜。

しかも今日は風もあるしね。
せっかく集めても、ちょっと目を離すとすぐにまた散らかっちゃう。もう、最悪!

でも、せっかくのお庭だし、やっぱり綺麗にしておきたいんだよね。
そりゃあ色づいた落ち葉が庭にちらほらとあるのは、それはそれで風情があるってものでしょうけど、今の状態はちょっと多すぎなんだよね・・・。

「葉っぱと遊んでいるのか?」

こ、この声は・・・!

慌てて振り向くと、やっぱり大久保さん。
腕組みをして縁側に立って私を見下ろしている。
相変わらずの上から目線なんだけど、この角度から見ると垂れ目が強調されてますよ。
本人は知らないでしょうけどね〜。

「遊んでないです!落ち葉を集めてるんです。
・・・ったく、見ればわかるじゃないですか?!
大久保さんほどの人がそんな事もわからないなんて、やっぱり歳ですかね?」

目には目を、歯には歯を、憎まれ口には憎まれ口の3倍返しよ!

『ふんっ』と鼻先で笑っただけで、私のコメントはあっさりと無視。

「それで庭を片付けているつもりか?
そんな事では、落ち葉を全部集め終わる前に年が明けてしまうぞ。
頭の悪い者はやはり手際も悪いものだな」

ちょっと、ちょっと・・・。
その大げさなため息は何なの?!

・・・あれ、大久保さんが庭に降りて来た。

「貸せ」

私の手から帚を取ると、すごく手際良く落ち葉を集め始めた。
風の方向も計算に入れてさっさと集め、それが飛ばされないうちに用意しておいた竹籠にサッと入れてしまう。

え〜、ただの落ち葉集めなのに、なんかすごく凛々しく見えちゃうよ。

「私に見とれるのは仕方のない事だが、ちゃんとやり方もわかったのだろうな?」

「・・・は、はい!もちろん!」

慌てて返事をしたのはいいんだけど・・

「でも、見とれてなんかないです!」

つい、補足訂正しちゃう私。
だって悔しいんですもん・・・見とれてたのがバレてるのが。

「これだけ見事な手本を見た後だ。後は一人でも出来るだろう。年内には終われるように、せいぜい頑張るのだな」

と口の端を上げて笑うと、さっさと縁側を上がって奥へと消えて行った。

確かに何でも出来る人かもしれないけど、あの口調だけは本当に何とかならないものかしらね。
極渋のお茶を飲み過ぎて、言う事まで苦くなったんじゃない?!

でも・・・
帚を持ってサッサッと落ち葉を集める大久保さん、カッコ良かったな。
はらりとかかる長めの前髪。
鼻筋の通った、彫りの深い横顔。
長身で細身なんだけど、華奢じゃなくて、何だかしなやかな強さみたいなのがある。

・・・私ってば、何を考えてるの?!

そんな事に気を取られている暇はないのよ!
早く片付けてしまおう!


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