麗しき死蝶
□3.曇り空。
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天気予報なんてアテにならない。
さっきまで快晴だった空には、重くどんよりとした曇が少しずつ少しずつ、敷き詰められていく。
南野秀一‥‥もとい、蔵馬はそんな空を眺めながら、小さく溜め息を吐いた。
(傘、持ってくれば良かったかな‥)
まさか雨なんて降ると思っていなかった。
でもこの様子では、仕事が終わって帰る時間には、どしゃ降りになっているだろう。
「ふぅ‥」
「また溜め息吐いてる(笑)どうかしたの?」
いつから見られていたのか。
向かい側の席に座っている、確か同期で入った子だ。その子がこちらを見て笑っていた。
「いや、ちょっと傘を忘れてちゃってね‥どうしようかなって思ってたんですよ」
「あー‥そうよね。このままじゃ降ってきそうだもんね。天気予報も雨なんて言ってなかったし」
「ほんっと、アテにならないわよね」とブツブツ愚痴をこぼす彼女に、苦笑いで頷く。
「そっかー‥んじゃ大変だよねぇー。んー‥」
顎に手を添え、じっと一点を見つめながら何かを考えている彼女を怪訝そうに見ていると、彼女がパッと顔を上げて笑った。
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