麗しき死蝶
□4.死蝶の証。
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――瞼に浮かぶのは、
遠い日の思い出――‥
『今日も来ちゃった‥』
これは、今より少しだけ幼い私。
『またお前か‥もうここへは来るなと何度も言っただろ』
また呆れたように笑うのね‥。
だけど、どこか優しい表情をする貴方が私は、とても好きだった。
『‥‥ごめんなさい‥』
そう、小さく謝れば貴方は決まって、その大きな手で頭を撫でてくれた。
子供扱いされていること、凄くムカついたけれど、貴方の手は温かで心地良くて、ムカつきなんてすぐに消えていた。
『‥それで‥今日はどうした』
素っ気ない貴方の声と表情。
怒らせてしまったと思い、背を向け帰ろうとすれば、腕を引っ張られる。
整った綺麗な顔で見つめられれば、もう逃げることは出来なくて、私はいつもの様に、つまらない話を初めてしまうの。
『ほぉ‥それで?』
どんなにつまらない話でも、貴方は真剣に聞いてくれたよね。
たまに見せた温かで優しい笑顔は、私だけのモノだって、勝手に思って喜んでいたわ。
――ねぇ、今どこにいるの‥?
貴方に‥‥
蔵馬に‥‥
私は、逢いたい――‥
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