麗しき死蝶
□8.久しぶり。
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冬はもうすぐ。
昼はまだ少し暖かいが、少し日が傾けば、寒さが身に染みる。
蔵馬は、そんなことを思いながら、久々に会う戦友の元へ急いでいた。
賑やかな街並みを抜け、静かになった暗い道を進むと見えてくる、屋台。
威勢のいい声と、陽気な笑い声が聞え、自然と笑みがこぼれた。
「元気そうですね」
そう笑いながら、暖簾をくぐった。
「おっ!久しぶりだなぁー!」
「相変わらずかっこいいじゃねぇか!元気だったか?」
パッと笑い、声を掛けてくれる友たちに、また笑みをこぼす。
「ま、座れや!」水を出しながら、席を勧める幽助に頷き、桑原の隣に蔵馬は座った。
「飛影はまだですか?」
見えないもう一人の大切な友。
幽助のことだから、煙鬼に頼んでこちらに呼んでいるだろう。
「ああ、昨日の今日だかんな。でもきっとアイツは来るべ!」
ニカッと笑いラーメンを作り出す。その手付きは見慣れたもので、すぐに美味しそうなラーメンが出来上がった。
「へい、お待ちっ!」
割り箸付きで机の上に置いてくれた幽助に礼を言うと、じっくりラーメンを見た。
なるとにメンマにネギにチャーシュー。
至ってシンプルだが、何とも食欲を誘う。
「どうした、蔵馬。ラーメン苦手だったか?」
箸を開いたものの、食べようとしない蔵馬に不安になったのか、幽助が心配そうに顔を覗きこむ。
「違うよ。あまりに美味しそうだから、じっくり見てたんです」
そして、行儀良く手を合わせ「頂きます」と言うと、ラーメンを口に運んだ。
「うまいっ!」
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