花びらの雫
□苦悩
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その日の夕方。
自分の感情に困惑し、考えごとをしていたエレナは、気がつけば太陽宮に帰って来てしまっていた。
「エレナ?」
「え‥?あ、サイアリーズ様‥」
ぼーっとしながら歩いていたから、声を掛けられるまで前方から歩いて来たサイアリーズに気がつかなかった。
「どうしたんだい?そんな顔して」
「え?」
「自分で分かってないのかい?‥そうだね。ちょっとこっち来な」
サイアリーズは、呆れたように溜め息を吐くと、エレナを引っ張って行った。
連れて来られたのは、アルシュタートの部屋だった。
「姉上、入るよ」
軽いノックをした後、何のためらいもなく部屋に入るサイアリーズ。
エレナが躊躇(ちゅうちょ)していると、部屋の中から声がした。
「何してんだい?さっさと入んな」
「は、はい!し、失礼致します」
意を決し、部屋に入った。そんなエレナを待っていたのは‥‥
「エレナ」
神々しい美貌。
聖母のような微笑み。
天女のような出(い)で立ち。
「陛下‥」
「何かあったようですね。わらわたちに、話してくれますか?」
「え‥?」
アルシュタートの言葉の意味が分からず、首を傾げていると、再びサイアリーズが呆れたように微笑んだ。
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