poetry

□ハナミズキ
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刀に貫かれ、じわじわと脇腹に広がる熱

銃で撃ち抜かれ、じんじんと痛む脛

力が入らなくて、小刻みに震える手


朦朧とした頭で直感で感じる"死"のお迎え


きっと

ここで私が死んでしまったら、

貴方は悲しんで

自分を責めるんだろうな、と

不思議と穏やかな気持ちで考える



やっと

貴方が手に入ったのに


五年越しの恋が

たったの七日間で終わるなんて

世の中上手くいかないもんだな



瞼を閉じれば

晩酌をしながら、僅かに頬を上気させ

いつものポーカーフェイスを崩して

たどたどしく愛の言葉を紡いできた

貴方の姿が浮かぶ


あの時は

緊張と喜びでそれどころじゃなかったけど

今思い返してみれば

とても愛しい




死ぬことなんて怖くない



ただ


貴方に会えなくなるのが寂しい



死ぬ覚悟は出来てたけど

残して逝く覚悟は出来てなかったから




神様

どうか

私の想いを彼に届けて下さい




私は、死んでもきっと

貴方のことを想い続けるだろうけど

貴方は、素敵な女に出逢って

今度こそ幸せになって下さい


貴方が笑えるようになるまでは

ずっと貴方の傍にいて支えますから


どうか

私に縛られないで下さい



貴方が歩み始めた暁には

私はどこかから貴方を見守っています

いつでも

どんなときでも



願わくば

最期にもう一度

貴方の顔が見たかった



(私を呼ぶ、珍しく焦った貴方の声が、聞こえたような気がした)
ハナミズキ
私の想いを届けて下さい

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