アホリズム

□第伍話:「氷」
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「おい、そこの軟弱優男!」

 星羅が霜を指差して怒鳴り声を上げた。

「軟弱優男って僕!?」

「テメェが訳わかんねぇ文字選ぶからこんなことになるんじゃねぇか!」

「そんなこと言われたって……馬頭さんも自分のこと棚に上げてるよね!?」

「じゃかぁしい!!」

 瞬間、般若のような形相の星羅の平手が飛んできた。

「痛っ!」

 派手な音を立てて、霜は地面に倒れた。

 すぐに次夢が駆け寄り、霜を助け起こす。

「大丈夫か?」

「う、うん」

「悪いな。あいつ、頭に血ィのぼるとすぐああなるんだ」

「もとのも、一言多いけどね。それも影響してるのかな?」

「多分な……。つかお前も随分と口が減らないな」

「えへへ」

 こそこそと話をする2人を見下ろし、馬頭が再び口を開いた。

「おい能無し。お前の力で何か脱出方法を見つけろ」

「俺だってそれは専門外だ!」

「……そんなことが出来るのか?」

「軟弱優男は黙ってな! 能無し、いいからやれ!」

「へいへい……。あ、俺の文字は『探』弱点とかを探し出す能力だ」

「はーたーらーけ!」

 渋々といった様子で次夢が先ほどの映像を出す。

 霜は右腕の袖を捲り上げて自分の文字を眺めた。

 手首にはあの青いミサンガが結ばれている。

「(どーしたらいいかなぁ……。確かにもっと使い勝手のいい文字を選べばよかった)」

 しばらくミサンガと文字を交互に眺めていた霜は、突然、はっと何かを思いついたように目を見開いた。

 そして、何も言わずにその場に座り込んだ。

「なあ、龍さんよ」

「ちょっと何してんのよあんた!」

 星羅が霜を怒鳴りつける。しかし、霜は反応せずに龍の返事を待つ。

 やがて、龍が6つある目を開いて霜を見下ろした。

『…………なんだ』





「出る方法を探してる間さ、暇だし、お喋りでもしてようよ」





 
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