生物委員会委員長は苦労人2

□48:山本
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【48:シナ】



早朝から くのたま達の課題の採点をしていると、最近忙しくしている忍たま上級生の気配。と、その後に続く他三名。

彼が他の生徒と共に職員室を訪れる事が珍しい為心なしか嬉しく思う。―――あらあら、私も歳ねぇ。


彼が連れてきたのは少し前に女神を名乗る少女と共にくノ一教室へやってきた五年生の忍たま達。一人不在のようだけれど。

少女と共に押し入ってきた時と雰囲気が大分変っている五年生たちはきっと、彼が正気に戻してくれたのね。



話を聞くと彼らを正気に戻したのは自分ではないという久々知舞琴君はそれでも嬉しそうで、支えてくれる後輩がいるのだと言えば照れくさそうにはにかんだ。

嗚呼、こんな風に年相応な表情をすることも出来るのね。嬉しくてこちらも笑顔になる。


尾浜君はまだ正気に戻っていない為、正気に戻り次第謝罪に来させると言う久々知君は流石最上級生。後輩の躾までしているのね。

そして、五年生三名を私の前に並ばせ、一人ずつの謝罪を促す。最初に口を開いたのはやはりこの子ね。



「五年い組 久々知兵助です。…その、以前は大変ご迷惑と狼藉を働きましたこと誠に申し訳ございませんでしたッ!!」

「「申し訳ございませんでしたッ」」



久々知君の謝罪に合わせて鉢屋君と不破君が同時に頭を下げる。

緊張しすぎて言葉が少し可笑しくなっていることを舞琴君と顔を見合わせて苦笑する。



「今までくのたまとの関係をまだ良好に保って居たにも拘らず、今回の件で私たちは彼女たちに腹立たしい思いをさせてしまいました」

『そうねぇ。彼女たち、とても怒っていたわよ?』

「ぅ…。今から彼女たちにも謝罪します。許してもらえなくても…」



俯きながら言葉に詰まってしまう久々知君の肩を叩き、今度は鉢屋君が一歩前に進み出る。



「次、ろ組の鉢屋三郎です。今回は女神に惑わされた私たちが未熟だった為に起こってしまいました。シナ先生にも琴先輩にも友や後輩にまで迷惑をかけてしまいました」

『自分の未熟さを知るいい機会になったのね?』

「はい。ですから、私は彼女たちに謝罪し失った信用を取り戻せる様努力致します」



何時も学級委員長として皆の見本になろうとしているだけあって、言葉も次の目標もはっきりしているわね。

言い終わると鉢屋君は一歩下がり、不破君の背中を軽く前に押しやる。



「同じくろ組の不破雷蔵です。普段優柔不断な僕だから女神と行動している際、自分のしている行動が悪いものなのかすら判断できていませんでした。それは克服しなければいけないことで…」

『優柔不断でなければ今回の事件は防げたと不破君は思っているのかしら?』

「い、いえっ。そう云う訳ではなくて…。えーと、その…」



私の質問に自分が何を言いたかったのか迷いだした不破君の傍に舞琴君が近づき優しく声をかける。



「不破、慌てなくてもいいですよ。落ち着いて、自分の素直な気持ちを伝えなさい」



本当に後輩思いな生徒ね。責任感が強いからこそ言葉に安心感と信頼性が篭っているわ。



「僕はもう惑わされない。僕は自分で考えてくのたまの皆にも謝罪して許してもらえるよう努力します!!」



ふふ。結局あまり纏まりきれていないけれど、意気込みだけは伝わって来たから今回は許してあげましょうか。



「私からも、弟と後輩がご迷惑をお掛けしました。山本先生、彼らもこの通り反省しています。如何か許してやってはもらえないでしょうか」



舞琴君に頭を下げられては誰も許さない訳にはいかないでしょうね。



『いいでしょう。久々知<舞琴>君に免じて許します。きちんと彼女たちにも謝罪しましょうね。きっと許してくれるわ』

「「「「有難う御座います!!」」」」



さて、後は彼らで何とかできるでしょう。私は引き続き課題の採点をしないとねぇ。


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