生物委員会委員長は苦労人3

□84:久々知
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【84:舞琴】



利吉さんを正気に戻し、俺の姿も彼女に見えるようになった。

後は色々腑に落ちていない奴らをまとめ納得させることが必要だ。


今後の方針を再度、彼女や利吉さん、他の先生方を含め纏める必要がある。

戦まで時間もないだろう。気が急くのもわかる。



――竹谷が心配だ。彼はまだ彼女の術を受けたことがない。

――彼女が心配だ。殺気立った同輩が何をしでかすか…。



『いくら俺が威圧で制していても、それを聞くような同輩ではないからなぁ…』

「どうしたんだ?折角この事件、収束に向かっているというのに」

「久々知くんは、まだ何か腑に落ちないことでも?」



現在先生方に大まかな説明を終え、共に五年は組に向かっている最中である。

俺が眉間にしわを寄せ独り言ちていることに山田先生、土井先生が気にかけて下さる。



『否、竹谷たちが心配だなと』

「はっはっは!久々知くんは優秀だが過保護すぎるのではないのかね」

『過保護、ですか……。確かに野村先生の仰ることも一理あるか……。ふむ、しかし……』


「久々知くんは久々知くんでいいではありませんか……」

『斜堂先生、ありがとうございます』



先生方と他愛のない話をしていると、目的の教室から不穏な気配。



「…わ、たし……死に、たくないよぉ……」

『っ。………』

「どうしたんだ?久々知」



彼女の言葉に身体が強張るのを感じて動けないでいると山田先生が声を掛けて下さった。



『いえ、なんでも。先生方は後ろから入って殺気立っている同輩を制してください』

「「「「承知した」」」



自身は前の入り口から中に入る。

そこには奥で床に座り込み、“一人は嫌”“死にたくない”“帰りたい”など呟きながら涙を流している少女。

後ろの同輩や後輩たちが俺の名前を呼んでいるが今はそっちを見ないでおこう。



不安と恐怖に震え泣いているその子を、そっと包み込む。



『その心配はありませんよ』



そう、死への不安なんてしなくていい。俺が責任をもってあるべき居場所へ帰してやるから。



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