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□五章
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大きなしだれ桜……
リクオの家のと似てる。
私はその場に一人で立っていた。
“は…か…春……春…華…”
私を呼ぶ声が聞こえた。
誰?
どこかなつかしい声だ。
声のする方に歩く。
“春香”
母さん?
姿は見えないけど、優しい声で私を呼ぶのは母さんだと思った。
“春香…あなたをおいていってごめんなさい……”
母さん…
“……あなたはこの世界に来たことを後悔してる?”
ううん……
でも、何で母さんがそのことを?
“……それはまだ言えない。けど…400年前の因縁に出逢うとき……全てが分かるわ”
400年前の因縁?それって……
“…もう時間ね”
母さんの言葉通りに、私の身体は透けていった。
っ……母さん!
“春香……”
次は…姿を見せてね。
私は涙をこらえて笑う。
“ええ”
私はその言葉を聞いたと同時に視界が真っ暗になった。
“あなたはきっと……私にはできなかったことを必ずやりとげるわ…ねえ、鯉伴?”
春香が去った後、怜香は何もない空を見上げ呟いた。
怜香にできなかったこととは何か。なぜ怜香は鯉伴の名前を口にしたのか。全ては400年前のある出来事が始まりだった。
それを春香が知るのは…そ う遠くない未来だろう……