□彼らしい愛
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一人暮らしを始め早四年。


家事は慣れた。 でも寂しさは慣れない。
だからあたしはいつだって傍に居てくれる誰かを探してる。



なのに





「なんで」



どうしていつもいつもあたしの大切な人を



「……殺すの?」



目の前の綺麗な殺人鬼を睨みつける。



「なんで、......殺すの?」



もう一度言った。殺人鬼は首を傾げる。
綺麗な黒髪がさらりとより揺れる。



「オレが聞きたい。なんで他の男を家に連 れ込んでるの」


「彼氏を家に招いて何が悪いの」


「彼氏?」



また首を傾げる。無表情だ。何を考えてい るのだろう。



「お前に彼氏なんて居たの?」


「......全員殺された」


「そう」


「イルミにだよ」


「それは悪いことをしたね」



いつものやり取り。拉致があかない。



「彼氏なんてもう作らなくていいんじゃない ?」


「なんで?」


「オレが居るじゃん」


「イルミはあたしのこと好きなの?」


「普通だよ」


「あたしは彼氏が欲しいの。イルミは彼氏に なってくれないでしょ」


「オレは殺し屋だからね」


「依頼なんて来てないでしょ。もう邪魔しな いでよ」



闇があたしを見る。大きな、深い闇だ。



「知ってるかい? お前に近づく男を殺すの はオレの仕事なんだよ」



お前はオレのものなんだから



(証拠を残さず人を簡単に殺せる器用な彼は)
(愛を伝えることは酷く不器用だった)
(そしてあたしも同様で)
(愛を確かめることは酷く不器用だった)



全くもって彼らしい歪んだ愛だ。

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