□依存束縛と嫌悪
1ページ/1ページ




「ねぇ、キルア」


「なんだよ?」




「好き!」




彼女の笑みが本当に愛おしくて、その柔らか い髪に手で触れた。
全く恥ずかしそうにせずに抱きついてくる彼女が可愛くて自然に口から言葉が出る 。



「ああ、俺も好きだ」



本当に好きだ。 むしろ俺の方が彼女に片想いしてたんだから。
俺より背が高くて年も上で。

叶う訳無いっ て分かってても、それでも本当に好きだったんだ。 何度も苦い想いをしてきたけど永い長い時を経て今こうして恋人同士って訳。


だから本当に幸せだ。 こうして抱き合って、キスもできて、何よりこうして笑い合って一緒に居られるから。





……その、はずだったんだ





「ねぇ、キルア」


「今までどこに居たの?探してたのに」


「ねぇ、今まで何してたの?」


「好きだよ、キルア」


「キルアからぎゅってしてよ!」




彼女は他人に依存しない一匹狼系だと思ってた。
だからこそ俺にだけ懐いて来る事が最初は幸せでたまらなかったんだけど。
何でかな。


好きだったはずなのに段々…

ウザイって思うようになったんだ




「ねぇ、キルア」


「………何?」



振り向かないまま返事をしたら手を握られ た。 嬉しくて仕方が無いはずのこの行為が今は本当に嫌で嫌で仕方が無い。


振り払いたくなる衝動を抑えて彼女の話を眉を顰めながら待つ。



「私の事、好き?」



………イラっ

それはタブーだろ?
本当に好きだったら聞かれる前に自然に自分から言うだろ?フツー。


だけど言わないって事は少しはお前から気持ちが離れてるって気付けよ。


そうやって追い討ちかけたら…あんたの事が ウザくて仕方が無いって思って本当に嫌い になっちまうぜ?




「ああ、好き」



それでもにっこり笑ってこう応える。うん、 俺ってばほんと謙虚。



「他の誰よりも、一番好き?」




……思い出した。これ、 俗に言う束縛って奴だよな。
彼女は俺の事束縛してる。 だから嫌なんだ。


俺が他人と仲良くしてると、それを遮ってく る。挙句の果て泣き出して、

「私の事よりあの子 の方がいいの?」

「キルアが他の子と笑ってるとイヤ」



…彼女の好きなところだってたくさんあ る。たくさんあるんだ。



だから我慢するところは我慢してくれれば いいのに。もういい大人なんだからさ。それをそれとなく今まで伝えてきたつもりなのに全然聞き入れようとしやしない。


俺は諦めた。あんたが変わらない限り俺が あんたを昔みたいに心から愛する事は、きっと無いだろうな。



「ああ、好きだよ。イチバン」





(キルアが私のこと嫌いなのは知ってるよ)
(だってわざと嫌われるようにしてるんだから)
(キルアのお兄さんからの命令で)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ