夢
□××してしまえ
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毎日毎日幾つもの仕事の依頼が来る。
憎し みの強いこの世界だからこそ、オレ達の仕事 はかなり繁盛している。
廃業の心配は何一つない。仕事が無くなる訳ないし。オレ達ゾル ディックが全員殺される、なんてことも有り得ない。
「こんばんは」
不意に響く声。聞きなれた声だ。
「名無しさん」
なんて残酷なのだろう。オレは今日、##NA ME1##を殺さなくてはならない。
「どうしたの急に。会いたくなった?」
「……そうかもしれない」
「鋲なんて構えて。私って歓迎されてる?」
普段と変わらない声色、笑顔、態度。どん な時でも冷静沈着な名無しさんに親近感が 湧くと同時に多少の違和感を感じる。
本当に人間なのだろうか、という疑惑。まるで人形のようだ。
「キミを殺すよ」
「依頼かな。依頼人は誰?」
「そう、仕事。仕事の話は外には漏らさない のがルール」
例えどんな依頼人だろうと、他言無用であ る。それにしても、何故この依頼が来たのだ ろう。そして、この仕事を見た瞬間に、何故 オレは名乗りを挙げたのだろう。
「一瞬だから。大人しくしてくれたら痛くし ないよ」
「……“知られざる名探偵(アンノーン ディ テクティヴ)”」
そういえば初めて名無しさんの念能力を 見る気がする。一体どんなものなのだろうか 。
全くの未知のものなので、オレはいったん距 離をとった。
「殺さないの? 逃げちゃうよ」
「……」
「念能力に警戒してるんだ? 慎重だね」
「オレの予想では、名無しさんは特質系。 だから当然警戒もする」
「私って特質系に見えるんだ。さて、どうか な」
……沈黙。何も起こらない。 オレは暗殺者。並の攻撃なんて寝ていても避けれるし、ある程度の攻撃でも目を閉じていても当たらない自信がある。だからこそ思う。
避けることが不可能に思えるほどの圧倒的 な力で、抵抗する気さえも奪われるような攻撃で、
……オレを殺して欲しい。
もっと愛していっそ殺して
(きっとキミじゃなきゃ出来ない)