□××してしまえ
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長い間、見つめ合っていた。
実際は一瞬 ったのかもしれない。
名無しさんがどんな 行動を起こすのか検討もつかない。目が離せなかった。


沈黙を破ったのは、予想だにしない第三者 だった。



「ひっ……!! な、んで……っ」



この場に不釣り合いな若い男。
明るい色に髪を染めている。ピアスを数個開け、手には 指輪、ズボンにはチェーンをたくさん身に付けている。そして上半身は何故か裸だ。


見かけは大したこと無さそうだ。しかしこ の男は突如現れた。気配をまるで感じなかっ たのに。 名無しさんを見る。首をかしげている。



「……キミは誰?」


「なんでオレがこんなところにっ...なんでお 前は死んでないんだ!? これは夢なのか… …?」


かなり錯乱している。オレは理解した。こ れは多分、名無しさんの念能力だろう。



「夢だよ」


「夢……?」


「うん。キミは今からお楽しみタイムだった 。なのに突然、一瞬でこんな屋外に居た。有 り得ないよね?」


「……有り得ない。そうだよな。だって、だ ってオレは……確かにお前を殺すように依頼 をしたんだんだ。かの有名なゾルディックに !」


「ていうか、私キミと会ったことある?」



信じられない、というように男は目を見開 いた。



「お前はオレを誘ったくせに、急に気が変わ ったとかなんとか言ってそそくさと帰った! 運悪く彼女にホテルから出るところを見ら れてフラれるし、……プライドを傷つけられ た!」



鬼のような形相だ。にしてもくだらない。


呆れて思わず溜め息が漏れそうになった。 瞬間、男の腹に穴が開いた。



「へぇ。ごめんね、悪気は無かったと思う」


「ぇ……あ、……」


「でもキミは運が無かった。可哀想に」



ポツポツと男の体に穴が開き、しまいには跡形もなく消えてしまった。男は自分がどう いう状況だったのかわからないまま死んだだ ろう。……死んだ?



「死んだの?」


「死んだ、というか消滅かな。これで依頼人 は消えたけど、まだ私を殺す?」


「……いや、大丈夫」



得たいの知れない念能力。やはり##NAME1 ##は特質系と見ていいだろう。



「あんな依頼、イルミも断ってくれたらいい のに」


「仕事だからね」



嘘。断ることなんていくらでも出来た。



「殺されそうになったら私もさすがに抵抗す るよ。一方が諦めるまでずっと傷つけ合うこ とになる」


「諦める……つまり、殺されるまで。殺し合 いだね」



オレ殺し合いを望んでいたのだろうか。



「もしかして殺されたかったの?」



いや、殺されることを望んでいたのだろう か。



「……そう、かもしれないな」


「イルミってMだっけ?」


「違うけど、何となく」


「何それ、歯切れ悪いなぁ」



オレが死ぬとき、傍に名無しさんにいて 欲しい。欲を言えば、オレの地塗られた人生 に幕を引くのか名無しさんであってほしい 。
数多くの人間を一人で死なせていったオレ が言うのは最低だと人は罵るだろう。



「もしイルミが死にたいときは、私が殺して あげるよ」



こんなに狂った女を優しいと思うオレは狂 っている。しかしそんなことはどうでもいい 。オレは名無しさんに惚れているのだろう 。



「いくらで?」


「お金は要らない。友達だからね、サービス 」



やはり名無しさんは優しい。欲しい言葉 をくれる最高の女。




……ああ、

もっと愛していっそ殺して
(狂おしい程、いとおしい)

 
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