If…

□生徒会長とプリン
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キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン♪

『起立、礼。ありがとうございました』

今日の最後の授業に引き続きHRが終わるとすぐ、みどりが近寄ってきた。

『ねぇねぇ、ホントに会長に差し入れするの?』

差し入れとは今評判のスイーツショップで売り出された新商品のプリンのこと。
新商品ということもあり、なかなか手に入らないのだが運よく買うことが出来た。

「うん。みどりのおかげで折角手に入ったし・・」

『でも会長って甘いものとか食べなさそうなのに』

私の彼は生徒会長の石神さん。涼やかな目許に(人によっては冷たく感じるというが)眼鏡が良く似合ういわゆるイケメンなのだが、いつも詰襟は一番上まできっちりと止め、真面目な性格からか近寄りがたく感じる生徒も多く陰では“サイボーグ”なんて呼ばれてたりもする。

「最近、忙しそうだから少しでも疲れを取ってもらおうかなって思って」

ついでに言うと生徒会の役員とみどり以外は石神さんがプリン好きなことは知らない。

『そうかぁ〜、ま、会長はもも☆からの差し入れなら何でも食べてくれそうだもんね〜』

みどりがにやにやしながら言ってくる。

「何でもってことは無いけど・・あっ、急がないと遅くなっちゃう」

時計を見て思いのほか時間がたっていることに気づく。

『ほんとだ!マカボンがいる間じゃないと保健室が閉まっちゃうね』

いってらっしゃ〜い というみどりに手を振り急いで保健室へ向かう。

「真壁先生、いらっしゃいますか?」

保健室の前で声をかけると中から『どうぞ』という答えが返ってくるのを待って扉を開ける。

「先生、ありがとうございました」

中に入ると冷蔵庫からプリンの入った箱を取り出している先生にお礼を言う。

『いえいえ』

学校に持ってきたものの教室に置いておくわけにもいかず考えた末、以前保健委員だった仲良くさせてもらった真壁先生を頼ることにした。

先生は優しい笑顔でだけどちょっと困った顔で『本当は駄目なんですが』と言いながらも引き受けてくれた。

箱を受け取りもう一度お礼を言って少し小走りになりながら生徒会室に向かう。

「この時間ならまだ誰も来ていない筈」

生徒会室の前に着き、息を整えてから扉をノックする。

『はい』

近づいてくる足音にドキドキしながら待っていると扉が開かれる。

『おや、もも☆でしたか。どうしました?』

一瞬、不思議そうにしたもののすぐにいつもの優しい顔になった石神さんが聞いてくる。

「あの・・・中に入ってもいいですか?」

『えっ?』

「あの、差し入れを持ってきたんです。最近、忙しそうだから・・」

石神さんは私が抱えている箱に気づくと『仕方ないですね、本来、部外者は立ち入り禁止なのですが』といいながらも中に入れてくれた。

「これ、“katsuragi”の新商品のプリンです。少しでも疲れがとれたらと思って」

この台詞、みどりにも言ったな と頭の片隅で思いながら会長席に座った石神さんの前にプリンとスプーンを置く。

『全く・・・学校では甘いものは食べないようにしているというのに。仕方ないですね、他の役員が来る前に2人で頂きましょうか』

苦笑いをしながらもどこか嬉しそうに言ってくれる石神さんをみて私も嬉しくなる。

「はい!」

『本当は膝の上にのせて食べたいところですが、いつ誰が入ってくるとも限りませんからね』

石神さんは立ち上がると澄ました顔でさらりと言いながら副会長の席を自分の隣に持ってくる。

私は赤面した顔を手で押さえつつ席に座ると一緒にプリンを食べた。

『美味しいですね、ありがとうもも☆』

微笑みながらプリンを口に運ぶ石神さんに見惚れる。

『もも☆、プリンがついてますよ』

慌てて拭おうとする手を止められ石神さんが素早くキスをする。

『嘘です』

「い・石神さん!」

『もも☆があまりにも可愛い顔をするのが駄目なんです』

「えぇ〜」

せっかく治まった顔にまた血が集まってくる。

『もも☆・・』

石神さんは優しく私の頬にふれるとそっとキスをしてくれた。

窓から差し込む夕日が一つになった私達の影を優しく包み込んでいた。


※ ※※※

『ところでプリンは冷たかったようですが何処に保管していたんですか?』

「保健室の真壁先生に頼み込んで冷蔵庫に入れてもらってました」

『そうですか・・真壁先生ですか・・あとでちょっと話をしないといけませんね』

「えぇ〜〜〜」



Fin


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