リボーン書き場

□空に巣掻く
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・スレツナ
・ちょっとグロい描写あり






――――なんで。なんで、彼が倒れてる?

彼はとても強くて。自分とは、弱い自分とは比べものにならないくらい、強くて。

彼はいつも自由で。
彼はいつも強くて。

弱く臆病な自分を、いつも、助けて、くれて。

なのに。
なんで。

.......ああ、そうだ、彼は。弱い俺を、守ろうとして。

俺が、弱いから。

―――――――俺が。










「戦況はどうだ!?」
「山本が負傷しました!リボーンさん!十代目は!?」

突如ボンゴレファミリーに宣戦布告し攻撃を仕掛けたのは若手マフィア、セルペンテファミリー。ボンゴレを中心とする古い秩序に反感を持つ彼らは、同じような新興勢力をまとめあげ並盛へ、否、次期ボンゴレ十代目沢田綱吉とその守護者達へと襲撃を開始した。ボンゴレファミリーは巨大かつ強大な組織だが九代目は老いており、かつ血筋からボンゴレを引き継げる唯一の後継者はたかだか14の、それも平和な日本で生きてきたただの子供。
放っておけばいずれ死ぬ老いぼれより、先にボンゴレの未来を潰してしまえという彼らの思惑により平和だった並盛は一転、非日常に巻き込まれることになる。
ただ、彼らにとり誤算だったのは『何も出来ない馬鹿な子供』の十代目沢田綱吉とその守護者達が、今まで何度も試練をくぐり抜けてきた強者であること。想像外の反撃を受け一瞬で殺せるという計算は崩され、今は逆に人気のない廃工場へ追い詰められていた。

「くっ....このっ糞ガキどもがあああ!!!!」
「ボンゴレなんぞがあるからいつまで経っても俺達が日の目を見ない!!この!!時代遅れの!!過去の遺物が!!!!」

正に袋の鼠。しかし追い詰められた窮鼠は猫を噛む。だからこの時、誰一人として油断なんてしてはいけなかったのに。

「もういい加減に――――」
「死ねやボンゴレええええええええええええっ!!!!!!!!!!」

負けを悟り俯いていたように見えた敵のボスが急に。誰も反応できないほどの速さで、その手が、手が、手が。

「綱吉っっ!!」

肉を抉る、音が聞こえた。
――――綱吉を庇った、雲雀恭也の。

「..........え....」

時が止まったかのようで、誰一人として動けない。ずる、ぐちゃ。雲雀の腹から手が抜ける。そのまま重力に従い、崩れる雲雀の体を茫然自失の綱吉が支える。なんで、小さく呟きながら。
う、微かに呻く雲雀の呼吸はひゅうひゅうと荒い。腹に穴が開いているのだ。触れる綱吉の手が、白いシャツが、地面が、血を吸って赤く染まる。なんで。また、小さく。

「あーあーーーーくっそ!!邪魔しやがってよーお!!お前がいなきゃあこのガキ殺れたのによ!!!!まあいい...皆皆しねしねしね!!さあ死ねボンゴレ十代目ぇええ!!!!」
「「「ツナっっ(十代目)!!!!」」」

苛立ちに顔を歪め悪鬼の形相で迫りくる敵。自分たちが生きることより、ボンゴレを潰すことを優先する覚悟を決めたのか他の敵もそれぞれ守護者達へと向かっていく。だから守護者達もリボーンも間に合わない。綱吉を、自分たちのボスを守れない。綱吉は雲雀を抱き抱え茫然自失の状態で、目の前に迫った刃にも反応できない。迫る、刃。その時。

「―――――――」

血にまみれ倒れ伏す微かな声が、緊迫した時を止めた。

「あ、

ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

悲鳴。もしくは産声、あるいは、慟哭。ぴくりとも動かなかった綱吉から発された声は、その場にいる全員の動きを止めた。四方からの視線の中、顔を上げた綱吉の、その顔に浮かぶのは笑み。底冷えするようなその笑顔は、周囲を圧倒して。ゆるり。笑顔のまま口を開く。誰も聞いたことのないような、人間味など一片もない、完全に無感情な声で。

「しね」

その瞬間、綱吉に手を伸ばし刃を向けていた男の頭が破裂した。目から、口から、全身ありとあらゆるところから氷の刃が生え出で男の体を挽き肉にしていく。飛び散る体液、男、いや、人間だったものが辺りを汚しても無表情で、冷静に自分たちにそれがかからないようにだけ気をつけて。やがて完全に男がペースト状になるとようやく次の言葉を発した。

「恭也、ちょっと待ってて」

そっと地面に雲雀の体を寝かせ、その上で手をかざす。するとピキピキと音をたて腹に開いた穴を氷が覆い、流れる血をせき止める。雲雀はもう意識がなく返事を返さないが、荒く微かだった呼吸がそれによって安定した。

「全員、殺すからさあ」

そう言ってわらう綱吉の手は、

「――――――っ!!」

絶句する守護者達にも向けられて、いた。

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