リボーン書き場
□私の名前は主人公
2ページ/2ページ
何が起こったのか、咄嗟に判断出来なかった。
ぎゃりぎゃり、アスファルトを削るタイヤの轟音。目の前に、暴走する大型トラックが迫って、何も、考えられなくて。
一瞬の空白。
私の命は、永遠に喪われた。
「ツナ、パスいったぞ」
その声にハッとして振り向くともう目の前に迫っていた。為す術もなく顔面にボールを受ける。
「ぶっ!?」
「またかよーっ」
「頼むぜツナ!」
流石に倒れはしないけど、相当なダメージを…!ってか、何これ!?どこなん!?走馬灯!?
混乱するひまもなく、全く見覚えのない少年たち――中学生くらいだろうか、が試合を再開する。誰か心配してくれよ、というか私、トラックに牽かれてなかったっけ…
そこまで思考が及んだところで、「おいツナとめろ!」すぐ横をドリブルで走り抜けられる。ツナって私?すげー聞き覚えがあるのですが…
まあ、よく分からんが…任せておけ。
気持ちを切り替える。ぐだぐだしても仕方ない。
取り敢えず試合に集中しよう。今考えていることは、試合が終わってからでも考えられることなのだから。
通りすぎ様に見た少年Aの顔は余裕綽々に笑みを浮かべていた。よし、腹立つ。
少年Aの前にまた別の少年が立った。「役立たず!!」とこちらを見て舌打ちする少年Bは正直味方とは思えないけど…つーかいちいち辛辣過ぎない?
彼のヘルプで怯んだ少年A。でもすぐに切り替えて抜けようとする、虚をつかれて悔しそうな少年Bとは裏腹に、きっとまた笑みを浮かべているのだろう。よし、
まずはその、ふざけた幻想をぶち殺す…!!
背後から忍びより、バックチップ一閃。そげぶられた少年Aは何が起こったのかわからない、という顔をしているけどその隙を見逃す私じゃねぇよ!!
同じく呆然としている少年Bにパスをする。戸惑いながら受け取って、戸惑いながらシュートした。彼、上手いね。だけど何故に味方からパス受けて困惑してるんかね…
自分で決めなかったのはどちらが自軍のゴールかわからなかったからなんだけど、どうやらあちらの方らしい。
得点板を見れば30点差。めっちゃ負けてますやん…。
諦めたらそこで試合終了だよ、と自分に言い聞かせながら最後まで走りましたとさ。
まあ負けたけど。
い、いや、後二点差だったから…(震え声)しかし私がボールに触れる度に敵味方がざわめいていたんだけどどう云うことなん(困惑)
試合が終わって、味方(仮)に囲まれる。その表情は負けたのに皆晴れやかだった。
「ツナおまえ、どうしたんだよ!」
「すっげーな!!最初からやれって感じだけどよー」
未だに名前がわからない少年たちが口々に感嘆の声をあげる。曖昧な笑みを返すけど…しかし、ツナって…
「あ、あのさ」
「おーいお前ら!!負けた方のチームが掃除だぞ!」
「わーってるよ!仕方ねーなぁ、ちゃっちゃとやるぞお前ら」
「はーっ面倒くせー」
「まあ二点差だったからなー」
聞いてくれよ!!涙目で渡されたモップをかける。記憶にない体育館は広く、もし一人で掃除をしたら大変だろうな、と思う。
…あれ、なんか、すごい、デジャヴ。
「おい、手ぇ動かせよツナ!」
ツナって、さあ。
「あのさ…変なこと聞くけど」
「ああ?どうしたんだよ急に」
「名前、何?」
自分を指差しながら恐る恐る聞く。物凄く変な顔をされたけど、こっちは嫌な予感に冷や汗が止まらなかった。
フラッシュバックする、眼前一杯のトラック。
どこからか聞こえる、叫び声。
「沢田綱吉だろ。大丈夫かおまえ」
………………………………………………………………え?
.