リボーン書き場

□今日から私は
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シャワーを浴びたばかりの体が火照る。

ひどく、ひどく疲れているのに、意識だけが暗闇の中浮かび上がって、少しも眠れそうになかった。

ベッドの中で身動ぎする。
毎晩、あいつと一緒に寝起きしていたベッドとは違うスプリング。
…やっぱり、眠れる気がしなかった。









状況を整理しよう。まず、前提として私は死んだ。買い物帰りにトラックに牽かれて、恐らく即死だったのだろう。
運良く一命はとりとめたが植物状態とか、そういう可能性は一先ず捨てる。シャワーの湯の感覚も、飲んだ水の味だって、夢だなんて夢にも思えない現実味があったから。
次に、死んだらなぜかトリップしてしまい、これまたなぜかその作品の主人公になってた…オーケー、まだ早い。まだ混乱するには早い。
私は沢田綱吉になった。…うん、まだ、大丈夫。
それを受け止めると浮かぶのは本来あったはずの沢田綱吉(原作)の人格はどこにいったのか?という疑問だけど、
……………それ以上考えるなって、私のすべてが叫んでいる。
実際、考えてもどうしようもない上怖い考えしか浮かんでこないので、これ以上この問題について考えるのは止めよう…。

はーっ、息を大きく吐いた。

しっかし…リボーンかあ…。
突然だけど、前世(確定)の私は所謂オタクだった。しかも腐女子だった。その上廚2病患者だった。三重苦…。
ああ…好きだったよ、大好きだったとも。リボーンめっちゃ好きで散々妄想させて貰ったよ!どれくらいって、自分で本とか出すくらいに…だからリボーンのことは人より詳しい自負がある。
それだけに、この展開はオタとしては喜ぶべきなんだろうけど…。

決して手が届かないからこそ…、人は空想に焦がれるんだぜ…?

つまりトリップしちゃえばそれ二次元ちゃう現実やーん!って話でさぁ…。うわー、頭抱えるわ。
また、性別変わってるのが地味に痛いな…。見た目は女の子とは言え、男女だと脳のつくりから違うからね…弟がいて本当に良かった。
更に云うと私は腐女子なんだよ…腐っていることに誇りを持って生きてるんだよ。今更更正なんて出来ないよ…。あれは恐ろしい不治の病や…。
腐女子からホモを抜いたらただの女子になるじゃないか、どうしてくれるんだよー。リボーンが同居するからには絶対パソコンの履歴とか全部把握されるじゃないですかーやだー。
…………………や、やだなぁー(震え声)

………ん?…パソコンの履歴…?…なんか重大なことを忘れてる気が…。
…………………止めよう、この問題について考えるの止めよう。



ごろり、寝返りをうつ。



そう考えると非常に惜しいわ…ネットや薄い本で補給できないからと云って現実で補給しようにも私、リボーンの最愛カプヒバツナだったから…。他も概ね綱吉受け専門だったし。
と云うか私が一番好きだったキャラ自体綱吉だし。
なのにこれからどれだけの綱吉受け萌え展開が来たところで中身が私な以上BLにはならないっていう。腐女子へ巧妙に仕掛けられた苦行だろこれ…。孔明の罠?
逆ハー狙いな夢子さんなら女の子になりたかっただろうし、腐女子ならモブでありたい。ほんと誰得だよ、まんまで成り代わりとかさ。
自分なんていらないのですよ!ことホモに関しては…。



マフィアになりたくもないしなー。この世界でも友達は欲しいけど、沢田綱吉じゃなくって、私が生きるなら…正直山本とかより坂下君みたいな人と仲良くなりたいし。

あー、どうしよう。



バサッ。起き上がる。ベッドから上半身だけ起こした体勢で、不毛な思考に結論を下した。



…………………深夜、二時を回ったテンションで。



(貴様それでも腐女子の端くれかァーーー!!望む萌えがないのなら自ら生み出せばいいッ!!私ともあろうものがッなんッたる惰弱!!)

(忘れたか私!!マイナー作品を愛してしまい、フォレストその他をいくら回ってもその作品のサイトが無い苦渋の現実に直面しッ)

(『逆に考えるんだ、無ければ自分で作ればいい』とッ!!溢れる愛とホモへの渇望を糧に、一からサイトを建設したあの日をッ!!―――)

(私は家畜の安寧に重んじる豚か…?いいや、否ッ!!断じて否ッ!!)

(やってやる…やってやるよ神様って奴よォ…沢田綱吉の稼働区域を振り切った、最高のパフォーマンスって奴だ…へッ、やっぱり私はこうじゃなくっちゃな)








(やってやるよ、誰も殺さなくて済む、誰の敵に回らなくても済む、そんな誰もが笑って誰もが望む最っ高に最っ高な幸福な結末ってヤツを!)







今から私は沢田綱吉。
この物語の、“主人公”。







そんなテンションで、疲れた頭を振り絞った私は、その後気絶するように眠りに落ちた。
だから気がつかなかったのだろう、あの時、窓の外暗闇の中で一人。




「………………………」




カーテン越しに映る私を見つめて、笑みを浮かべる影があったことを………。











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