リボーン書き場

□鮮やかな曇天
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「…………へえ」

ディーノの話を聞いた後も、雲雀の表情に変化はないように見えた。
少なくとも、表面上は。
仮にも自分の守るべきボスである沢田綱吉の豹変にも、まるで最初から知っていたかのような雲雀の落ち着きにディーノは頭を抱える。

「へえじゃねーだろ…」
「…それで?綱吉はどこにいったの」
「今、他の守護者や協力者達が全力で捜索にあたってる」
「見つかってないんだね」
「……ああ」

そう、とやはり動揺を見せず心配する素振りもなく、ベッドを降りようする雲雀。
当然ディーノが慌ててそれを止めるが、雲雀は煩そうに舌打ちをしてその手を払いのけた。

「邪魔」
「だから怪我してるって言ってんだろうがこの聞かん坊が!!お前までどこ行く気なんだよ!」
「僕の学校。それに、怪我なんてしてないって」
「んなわけねぇだろ、腹貫通したんだぞ!?」
「もう治ったよ、ほら」
「何言って、…………っ!?」

絶句、する。
確かに穴が空いたと。炎だか他の武器だか詳細は知らないが、強化された腕を突っ込まれ肉はむしられ惨断された筋肉から血が吹き出ていたと、聞いたのに。
病院服を気にする様子もなくぺらりと捲り見せられた白い腹は確かに傷一つない綺麗なものだった。

「だから言ったでしょ?」
「な、なんで…」
「綱吉がいるのに僕が怪我とかするわけないし」

何を言っているのか。
誰も、何もわからず暗闇の中困惑しているというのに、雲雀のこの落ち着きはなんだ。
雲雀は何を知っている?
引っ掛かるものがあった。

「綱吉…?お前、ツナのこと名前で呼んでたか?」

違和感。
少なくとも自分は、雲雀が綱吉と一緒にいるところを何回か見たことはあるが、雲雀が綱吉をそう呼ぶところは見たことがなかった。

それに、リボーンから聞いた話。
臆病で優しい、平凡な自分の弟弟子のはずだった、他ならぬ綱吉の台詞。



『俺は恭也を守るだけ。恭也以外はすべて敵だから』



「お前、恭也…………。お前は、ツナの何なんだ?」



酷く重大なことを口に出すつもりで、恐る恐る聞いた問いは、決まりきったことを答えるようあっさりと返された。



「幼馴染みで、世界でたった一人、綱吉だけの味方だよ」



世界の真理を口に出すように。
雲雀恭也は、そう言った。









出会いの早さなら綱吉だが、付き合いの長さでいうなら雲雀だ。これでもキャバッローネを纏めるボスであるディーノは人を見る目には自負があった。
だからこそ、そう断言した雲雀に気圧され動けなくなってしまった。見たことがなかったのだ。
味方だと、宣言するように堂々とそう言い放ち、
どこか誇らしげな、愛しむような笑みをゆっくりと形作った雲雀。
そんな風に笑う彼を、硬直するディーノは。

まるで想像したことも。








向かい合う二人から離れて、広い病室の壁――扉が軋む音を立てて開かれる。



「…………今の、どういうことだよ…」








“二人だけの世界”

それが壊れる日は近いだろう。そんな予想に名残惜しさを感じながら、雲雀はいつかの誓いを果たす。


「やあ、獄寺隼人。誠心誠意、そのままの意味だよ」








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